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異世界の常識破壊者【オーバーブレイカー】  作者: しまらぎ
三章 〜王都とクエストギルド〜
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『任務〜協力プレイ〜』

 

 多くの敵に囲まれ、僕も体勢を整えて剣を構える。レッドウルフ達の口元には、さっきのよりも赤く大きな炎が燃え盛っている。僕は剣を使った事がほとんどないけど、それでも剣を大きく構えて目の前の敵の方へ走った。が、その時だった。


「危ない! 避けて、心葉!」

「……‼︎」


 ドゴおおおぉぉ……。

 訳も分からずとっさに横に飛ぶが、それを躱すことはできなかった。大きな爆発音と共に身体にかなりの熱を感じる。


「コノハ!」


 僕の近くに大きな火球が落ちて爆発したのだ。

 ドスッと地面に叩きつけられるように落下し、そのまま転がっていく。交通事故の比じゃないな……。過去に一度交通事故で10メートルほど吹っ飛ばされた事があるけど、その時の痛さとは……あれ? そこまで痛くはない?


「イテテ……。なんなんだ? うわっ、あっつ」


 軽傷で済んだものの、服が少し燃えているからとても熱い。それに気がついたリッタが僕に水魔法をかけてその火を消してくれる。が、結局焦げた服が傷口に当たってとてもヒリヒリする。考えてみればこのパーティーにはヒーラーが1人もいないんだよな……。こんな事ならルナに1つぐらい聞いとくべきだった。

 ヒールとか唱えたら意外と出来ちゃったりして。


 それにしても今のはいったいなんなんだろ? と振り返ってみると、そこにはひときわ大きなレッドウルフと2頭のレッドウルフがいた。

 このでっかいのがさっきの火球を……。


「あれは! レッドウルフの上位種のブレイズウルフです!」

「ブレイズウルフ? なんでそんな奴がここに……っていてもおかしくはないのか。っていうかどの程度の相手なのか知らない!」

「以前わたしの村の近くに一度だけ姿を見せて、かなりの被害を与えて帰っていきました! レッドウルフよりもかなり威力の高い魔法を放ってきます。気をつけて下さい!」


 こんな時に変なのが出てきてくれるものだ。これなら正直あのときの魔族の方が楽だった気がする。人型相手と動物相手じゃ勝手が違うんだな……。ここの動物は知能が高い。普通の攻撃じゃあ当たりもしない。水をかければなんとかなるだろうとリッタの水魔法で攻撃してはみるものの大した効果は得られなかった。さて、どうしようか……。

 果たしてこいつらの弱点ってなんだろうか? ……うーむ、思いつかない。

 最初の相手を間違えた気がする……。だってアニメでギルドに行ってクエスト受けたら最初の敵ってスライムとかオオカミでしょ? 僕はもっと簡単に出来ると思ってたんだけど、想像を遥かに超える強さだった。だから任務を受けようとした時に受付の人に止められたのか……。やっぱり忠告に従っておけばよかったなぁ。ま、もう今更だけどね。

 あ! そう言えば……こんな言葉があったっけ。


『相手に直接攻撃することだけが攻撃じゃない』


 攻撃を仕掛けるだけが攻撃じゃないってことだ。攻撃以外で相手に勝つ方法、それを考えなければならない。

 ハッ、もしかして……。

 攻撃以外……だったら相手が自分に攻撃出来ない状況を作り出せばいいんじゃないか? 逃げる事しか出来ないようにしてしまえばそんなに戦わずとも勝つことが出来る!

 レッドウルフの攻撃手段、それはほとんどが魔法だ。噛み付いてくるのは簡単に対処出来るから、魔法を放てなくしちゃえば話は早い。僕にはそれが出来る能力があるじゃないか! そう、パニッシュだ!



 パニッシュと思いついたはいいが、もっと考えなくちゃいけない。ブレイズウルフまで含めてパニッシュをかけるとなると、必ずリッタとゆぅがその範囲に入ってしまう。その瞬間に2人に何かが起こったら僕は2人を守りきれない。魔力を使うことに集中していれば、他の事にまで対処することはできないし、リッタもゆぅも戦闘経験が浅過ぎて避けることもままならない。僕もそうなのだが……やっぱり2人は危険だ。

 かと言って、範囲を指定してパニッシュを使うことは僕には出来ない。そこまでの魔力制御力を持ち合わせていないのだ。パニッシュを敵にだけ当てる方法……相手に触れるのが確実だが、そんなことが出来ていればとっくに倒せている。もっと画期的なことを考えなければ。

 考えろ、考えるんだ! いつもアニメを見て勉強してきたじゃないか! あの主人公たちはどうやって戦ってきたんだ! もう時間がない。

 レイ、あなたならこの状況をどう乗り切るんですか?

 考えろ、もっと、もっと考えるんだ‼︎


『人間は万能な生き物じゃない。だからこそ協力するんだ。戦いだってそうだよ。協力が大事。みんなで連続して攻めていけば、必ず隙は現れる。それこそが勝負の要だ』


 そうだ……協力だよ! 何故思いつかなかったんだ! 2人と一緒に相手を詰ませる手を出し続ければいいんだ!


「リッタ! 水の範囲魔法で攻撃してくれ! ゆぅはそのあとすぐに風魔法で奴らの足を止めて!」

「分かりました!」

「うん! やってみる! いっくよー、『スプラッシュ』‼︎」


 大きな水の塊がレッドウルフたちの側で爆発する。かなりの衝撃が奴らを襲う。その水は奴らの口元の炎を消し去り、多少なりともの隙を作る。

 そしてゆぅもすぐに魔法を放つ。


「いきます! 大いなる風よ『ウインド』!」


 吹き荒れる強風に怯んだレッドウルフたちは反応に遅れて動くことが出来なくなっている。動きも魔法も封じたぞ! よし、ここまでは予想通りだ!

 あとは僕がこの技を成功させれば終わりだ!

 いつもアニメばかり見ていたのだ。やりたい技ならいくらでもある。そんな中の1つ、武器に魔法をかけて攻撃するという技に挑戦だ。武器にパニッシュがかけられれば、きっと奴らに対抗できる。一瞬だけでも隙がうまれたらもう僕の勝利だ!

 さぁ、身体中の魔力を右手に集中して……。

 そのまま一気に剣に放出だ‼︎

 僕の魔力に反応してラナリオンがだんだん光を帯びて輝きだす。よっしゃ! 成功だ! これなら、いける‼︎


 レッドウルフとブレイズウルフの放った火球が僕に向かって勢いよく飛び出す中、僕もその火球に向かって走り出す。

 そして火球が目の前に来た瞬間、ラナリオンを一気に振り下ろす。次々と迫り来る火球をラナリオンで斬り裂いた。パニッシュのかかったルナリオンは全ての魔法や魔力を打ち砕く。奴らの放った火球も、ルナリオンに触れた途端に光の粒となって消えていく。

 最後の一つを斬り裂いて、僕はブレイズウルフに斬りかかる。


「今度こそ、いっけえぇ!」


 ズザッ! そんな音を上げながらブレイズウルフの右脚にパクリと切り込みが入った。

 その瞬間、パリンッと音を立てて、ブレイズウルフから魔力が吹き飛んだ。

 ワオオオオォォと大きな声を上げるブレイズウルフをほっといたまま、ほかの3頭のレッドウルフにも斬りかかる。ゆぅのウインドが僕にとっては大きな追い風となって、剣の速さがさらに増しているため、この一撃はかなりのダメージとなっているだろう。おまけに魔力まで消されたもんだから、ゆぅの魔力が止んだところで攻撃を仕掛けてくる奴は一匹もいなかった。

 勝負あり、だな!

三章、長くなりそうです……

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