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異世界の常識破壊者【オーバーブレイカー】  作者: しまらぎ
二章 〜襲来を超えて〜
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『国王と空腹と褒美』

 いざ城の中に入ってみるとそのでかさを実感する。

 この国の人が全員入れそうなくらいでかいぞ! ってそりゃ言い過ぎか……。


 演習場より長い廊下を歩いて、階段を上り、大きな扉が開かれる。レッドカーペットが長く伸びていて、その先にはキラキラと輝く玉座があった。カーペットの横には騎士達がズラーッと並び、顔の前に剣を構えている。

 どこかの映画やアニメやゲームで見た光景だけど、これほんとにやるんだな。こんな大人数で一気に攻撃されたら生きてられる気がしないよ……。


 僕らが応接間らしきその部屋に入ると、大きな扉は閉められた。沈黙の中をそのまま玉座の前まで歩き、国王の前でレイスさんが跪く。

 こう言う時ってどうするべきなのかな? 正しい選択肢が分からないんだけど……。ま、なるようになるか! 流れに身を任せてればいいかな。


「国王陛下、このレイス、先の戦いで悪魔を討伐した者共をお連れ致しました!」

「な、なんと! もう見つかったのか!」

「この者達にございます」

「お主らよ、面をあげ私にその名を教えてくれ」


 この人がこの国の王であるテスノ・クラウス様だ。正確にはテスノ・クラウス17世だが。

 この国、クラウス王国はかなり昔から存在していて、世界で一番の大国である。他国との繋がりや信頼も厚く、クラウス王国騎士団は多くの国に派遣されているのだ。

 そして、テスノ王は世界中の人間の中で最も影響力のある人物だと言う。ここで粗相があれば僕らの人生は終わったようなものだし、その逆もまた然りだ。

 まったくとんでもない人に呼ばれたもんだな。無礼のないようにしないといけないって事は分かってるんだけど……なんにせ自身がない。リッタもゆぅもガチガチになってるし……変なこと言わないか心配だな……。もちろん僕もだけど。


「はじめまして、テスノ陛下。僕は三波心葉と言います」

「リッタ・エルクストと申します」

「ユシア・シナ・リトレイナと申します」

「はっはっは、そう畏まらんでもいい。其方らはこの国にとっては英雄のようなものだ。悪魔討伐など、そんな少人数でできるものではない。いやぁ、お見事だ!」

「もったいなきお言葉です」


 銀髪で髭を生やしたゴツいおっさん……おっと、国王陛下は、拍手をしながら僕らをこの後10分ぐらい褒め続けた。とにかく長話しがお好きなようで……。

 こんな感じの人ってよくいたっけなぁ……。1時間くらい平気で話し続ける人。どう対処したらいいやら……。コミュ力の低い僕には正直お手上げだった。


 お褒めの言葉が終わると遂に本題に入るといったように一呼吸置いてまた話を始めた。

 どんだけ話す事あんだよ! せめて1つにまとめてくれよ! なんて王様に言える筈もないか……。

 だが、早く終われと思っていた話しがとんでもない方向へと進んでいったのだ。


「心葉とその連れの者、其方らに1つ褒美をとらせよう! 欲しい物があればなんでも言ってみよ」

「そんな、僕等は褒美を授かるようなことは何も……まぁしてなくもないっぽいですけど、そのお気持ちだけで十分にございます」


 王様を前にして僕だって緊張しているのだ。こういう時にどういった反応をするのが正しいのかわからない。こればかりは地球人のほとんどが知らないんだろうけど。

 いつか見た時代劇系のドラマにあったようなセリフを並べてみたけど大丈夫だったかな? 断るのも無礼にあたるような気がするし、流石に気に障るようなことはしてないと思うけど……。それに欲しいものなんてほとんどないしな。ほんとの事を言っただけだ。だけなんだけどなぁ……。僕、こんなところで打ち首とか絶対いやだよ?

 はぁ……とりあえず王様の次の言葉を待つしかないか……。

 なんて思っていたのだが、この王様は結構……いや、かなり気さくなようだ。


「ハッハッハ、気に入ったぞ! 何も要らぬと申すか、そうか、それならば私から勝手に送らせてもらおう!」

「え⁉︎ えと……」


 何故だか気に入られてしまった……。僕なんかしたっけ? でもとりあえずはあの回答で正しかった訳だな。

 ふうぅ……やっぱり王様相手に話をするとか僕には難しすぎるよ……。横の二人にも難しかったようだな。さっきのままずっと硬直状態になっている。いやでも足とか震えてるな。かなりヤバいかな。僕もちょっとヤバそうだけどね。特にお腹が……。



「そうだな、明日あたりに其方らの泊まっている宿に送ろう! 旅人であるならもらっておいて損はせぬ!」

「あ、ありがとうございます!」


 もう普通の話し方に戻ってるな。なんて言い終わってからそう思う。そういうことってよくあるよね! 言っちゃってから気づくこと。こっちの世界では絶対的な身分の差があるから、言葉には気をつけて過ごさないといけない。そうでなくとも大事なことだが。


 それはそうと、王様は僕らに何を送ろうと考えているのかな? 気になるところではあるが、聞けるはずもなく陛下の話を10分ほど聞いて、やっと宿へ帰ることになった。

 ほんとにさ……どんだけ話すんだか……。

 空腹と緊張と疲れのトリプルパンチで僕の精神はとうに限界を超えてしまっていた。



 よっしゃーーー‼︎ やっとご飯が食べれるー!

 僕らは今、宿の食事場でご飯を食べているところだ。

 今日はこの都についてから何も食べていないからお腹もすくはずだ。だからか陛下のお話の半分くらいは頭に入ってこなかった。もうお腹が空きすぎて、お腹がならないように耐えるので精一杯だったからだ。もう褒美で何かご飯でも頼んどけばよかったかなぁ?

 なんてくだらない事を考えながらご飯にがっつくのだった。



 その後、宿に戻ってきてもう後は寝るだけだ。寝るだけ……なんだがなぁ……2人と部屋が同じだとすっかり忘れていた。

 そして目の前にあるのはシングルベッド、の上で飛び跳ねて戯れてるリッタとゆぅ。この2人はなんというか……幼い。

 いやまあね、目の前にふっかふかのベッドがあるから飛び跳ねたくなるのはわかるよ? でも人の家のベッドでやるもんじゃないでしょ。たとえ宿だとしても。

 もう10分ぐらいやっている。そろそろ飽きて欲しいものだけども、一向に終わる気配がない。はぁ、しょうがないか……。


「じゃあ僕は床で寝るから、君らはそのベッドで2人で寝てくれ。くれぐれも暴れてベッドを壊さないようにね? 」

「えぇ! 心葉は一緒に寝ないのですか⁉︎ パートナーとなった2人は毎晩寝床を共にするのが決まりです‼︎」

「いやいやいやいや、そんな決まり絶対ないでしょ! とにかく僕は1人で寝るから! そんじゃおやすみ!」


 ああ、この子もそういう子だったのか……。ほんの数日前のリッタとのことを思い出すな。

 どうか今回は、いや、これからはそんな事にならないといいんだけど。なんだか避けられそうにないのがとても悲しい……。

 嫌という訳じゃないけど、せめてもう少しぐらい羞恥心とかそう言ったものを持って欲しいと思う。

 何度こう思ったかはわからないけど、このままずっと旅を続けてったら僕の身が危険だ!

 何かいい方法でも探すとしようかな……。


「むー、心葉は意地悪です! 私たちはパートナーなのです! これじゃあ何のためのパートナーなのですか‼︎」

「少なくとも一緒に寝る為じゃないでしょ!」

「じゃあ私が心葉と一緒に寝ーー」

「「却下‼︎ 」です‼︎ 」

「そんな早く答えなくてもいいじゃん‼」

「特にリッタには前科があるからね。ミレナさんが居ないとは言え、気を抜く訳にはいかないよ」

「やっぱり心葉は意地悪だよぉ」


 うん、無理そうだな。僕に安眠が訪れることはもうきっとないんだろう。でも、こんなふうに話しているときが一番楽しい。

 このまま、自分が異世界から来たなんてことは忘れちゃいそうだ。この空間は僕が守らなくちゃいけない。

 また魔族が襲ってきても大丈夫なように強くならないとだな。

 ふわぁ……なんだか眠くなってきた。そろそろ寝ようかな。

 リッタとゆぅにおやすみと言って、床に敷いた布団で眠りについたのだった。

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