『夢を叶えに』
八日目の朝、リッタの部屋で目が覚める。もうすっかりこの生活に慣れていた。
今日はリッタに話をするぞ!
一週間たって自信がついた。自分とリッタを守れるだけの自信が。
リッタは旅をしてみたいって言ってた。世界を見てみたいとも言っていた。
僕はその願い、夢を叶えてあげたい。
リッタがこの世界で初めて優しくしてくれた人だから。その優しさで僕を助けてくれたから。今まで何度も感じているけど、また改めて思う。
彼女がいなかったら僕は死んでいたと。
だから絶対に叶えてあげると決めたんだ。それが僕に出来る唯一の恩返しだから。
深く深呼吸をして、窓から外を見ているリッタに話しかける。
「リッタ、大事な話があるんだ」
「大事な……話?」
「そう、大事な話」
もう一度深呼吸をして、話を続ける。
「リッタ、僕と一緒に旅をしよう。旅をして、世界をまわろう。前は君からそう言ってくれたね。あの時は君を守ることができるぐらいの力が無かったけど、今はその力があると思うし、その自信もある!
だからさ、リッタ。僕と旅をしよう。君と一緒に旅がしたい!」
「心葉、覚えてくれてたんだね、私の夢。心葉が待っててって言ってから、この日を楽しみにしてたんだ。ありがとね、心葉。私も心葉と一緒に旅がしたい! 今はあの時よりもずっと強くそう思う!」
「ありがとう、リッタ。これからもよろしくね」
「うん、よろしく!」
そう言う彼女の目には、薄く涙が浮かんでいた。
その涙と笑顔が、この日を……僕の言葉をどれだけ待っていたかを伝えてくる。
本当にありがとう、リッタ。
僕は心の中でもう一度、彼女にそう告げた。心の中で伝えるありがとうをいつかちゃんと大きな何かに変えて返してあげたい。
そのためにも僕は彼女を絶対に守り抜くし、自分をわざと危険に晒して彼女を1人にしたりしない。
僕はそう誓いを立てて、リッタと一緒に部屋を出たのだった。
時は夕食、ついにリッタの両親と旅について話す時が来た。
「……ってことで、パパ、ママ、私心葉と旅がしたいの!」
「リッタがそうしたいなら反対はしないわよ。あなたは昔から世界中を旅してみたいって言ってたものね。いつかこんな日が来るんじゃないかと思ってたのよ」
「いいの⁉︎」
ミレナさんの意外な反応にリッタが驚く。
「俺も反対はしない。しないが、絶対に帰って来るんだぞ? それと心葉、リッタの事よろしく頼む。
リッタにもしものことがあったら絶対に許さないからな?」
「心葉さん、お願いしますね?」
「任せて下さい! リッタは何があっても守り抜きます!」
「リッタ、幸せになるのよ?」
「うん!」
グリアさんもミレナさんも反対はしなかった。
いつかはこうなると分かっていたらしい。
グリアさんの言う通り、必ず無事に戻ってこよう。
それにしても、すんなりと事が進んで良かった。




