香原 燐、奪還作戦の計画
かなりの深手を負った俺はしばらくの間動くことが出来なかった。
しかし、その傷を負い、2週間ほど過ぎた頃、俺の傷は癒えてきたのだった。
医者によると、やはりこの傷の回復速度は異常らしく、何人もの医師達が驚いていた。
多分、恋達の必死の看護のお陰だろう、ありがたい限りだ。
「もう動けるかな」
「相変わらず速いよな、兄貴の回復速度は」
「そうか? 俺はそこまで感じないが」
「まぁ、そうだろうな、自分の事だし」
今日は退院の日だ、毎日看護に来てくれた恋が付き添いで来てくれた。
普段なら咲も居るはずだが、あいつは今は先生の近くにいてもらっている。
先生の暴走を制限するためだ、その甲斐あってか先生はまだ暴走してはいない。
「あ、先輩、もう大丈夫なんですか?」
「あぁ、何だ? 見舞いにでも来たのか?」
「はい、でも必要なかったみたいですね、あ、一緒に行きます」
外に出ようとしたときに丁度恵美に出会った。
見舞いに来てくれたのか、ありがたいことだ。
「それにしても燐先輩が攫われて、法助先輩は大怪我、そのせいで紀美先生は暴走しかけて
それを咲先輩が抑えて・・・これじゃあ、活動できそうにありませんよね」
「あぁ、そうだな、しばらくの間は傭兵部は活動できないだろう」
「てか、兄貴がまだ本調子じゃ無いのに活動とかするなよな」
現在傭兵部はバラバラだ、何とかして纏めたいが、紀美先生の暴走が怖い。
あの先生は怒ると何をするか分からないからな、単身でオーブ国に殴り込みに行く可能性だってある。
だから咲を近くに行かせたんだ、あいつはあんなんでも人を見る能力に優れている。
その能力をフルに使えば先生が暴走しそうになった時に止められると言うことだ。
「そうだ、燐が攫われたって国にちゃんと報告したか?」
「したみたいですよ、紀美先生が咲先輩と一緒に」
「そうか」
報告は完了しているのか、それならひとまずは安心だな。
後は、いつ燐の奪還作戦が決行されるかだな。
「まぁ、今は何も出来ないんだ、兄貴もそんなザマだし、しばらくの間待っておこう」
「それしか無いよな」
それから3週間ほど経過した、その時に国から俺達に呼びかけがあった。
この呼びかけに父さんと母さんはもの凄く驚いていたが、何も初めてじゃ無い。
俺達は国の呼びかけに答え、城に向かった。
「やっぱり迫力あるね」
「お城だからな、迫力は当然あるだろうな」
「私は初めてだ、何だか緊張するな」
「ジュエル国のお姫様に対してはそこまで緊張してなかったのにね」
「自分の国の女王様とかに会うんだ 緊張しないわけ無いだろ?」
恋は自分の国の女王様に会うのは緊張するって事か。
まぁ、そうだよな、緊張しないわけ無いか。
そんな事を思いながら、俺達は女王様が待つ部屋に入った。
「ルーン女王の呼びかけに答え、我ら傭兵部、ここに参りました」
「よく来ましたね、では、早速ですが本題です」
「はい」
前座は無いのか、それだけ深刻な事なんだろう。
「あなた方を呼んだのは聞きたいことが1つ、そして、2つほどお願いがあったので呼びました」
「はい、何でございましょう」
「まず1つ、聞きたいことですが、燐さんは本当に攫われたのですか?」
「はい、何故その様な疑問を?」
「実はですね、彼女の父親がオーブ国に拘束されていると言う報告があります」
その事を、国は把握していたんだな、いや、当然か、なんせ国の重役だ
このことを把握していない方がおかしい。
「本当ですか!?」
「えぇ、それに彼女がオーブ国で戦闘している姿を見た物もいます」
「そんな!」
オーブ国で戦闘となると、戦ったのはルーン国、あるいはジュエル国だが
ルーン国が戦ったなんて話は聞かない、つまりジュエル国との戦いに参加した可能性がある。
だとしたら、あいつはかなり精神的にダメージを負った可能性がある。
なんせ、ジュエル国の兵士は共に戦った仲間だからな・・・
「その報告はジュエル国の兵士から受けました、全員で拘束を行なおうとしたようですが
失敗し、逃がしたそうです」
「拘束を行なおうとしたんですか?」
「そう聞いています、少し前に共に戦った戦友の真意を知りたかったようで」
ジュエル国の兵士達も燐の事を嫌っている訳じゃ無いのか。
「その報告を受け、私は本当に燐さんは攫われたのか、それを聞きたいと思ったのです」
どうする? 話すか? しかし、燐の立場が危うくなる可能性も・・・
でも、話しておかないと行けない気もするし・・・
「何も燐さんを責めるつもりはありません、彼女は親を人質に取られていますしね」
俺はこの言葉で話す決心をした、この人なら大丈夫、そんな気持ちにもなった。
「じゃあ、話します、でも彼女を責めないでくださいね」
「はい、それは分かっています」
俺は燐が親の為に俺達を裏切ったと言うことを告げた。
だが、俺を撃ったというのは伏せておいた、必要の無い情報だからな。
「燐ちゃんが・・・裏切った?」
「あぁ、全部捕まったお父さんの為だ」
「なるほど、もしも裏切らなかったらお父さんを殺す、そんな風に脅されていたんですね」
「確信はありませんが、おそらく」
少しの間、思苦しい空気がこの場を包んだ。
しかし、その空気を断ち切ったのは女王様だった。
「では、オーブ国に拘束されている彼女の父親を解放するのを最優先目標とします」
「良いのですか!? 女王様! その様なことよりもオーブ国を制圧するのを優先した方が!」
「燐さんが敵にいては、制圧するのは至難の業ですよ、彼女は頭もよく
何より我々の事をよく知っている、その様な物が敵にいては我が軍は動きにくいでしょう?」
「ですが!」
「それに、彼女はまだ彼らにも未練があるはずです、なので父親を解放すれば
再び我が軍に戻ってきてくれるでしょう、そうすれば、オーブ国の制圧も楽になります」
女王様は周囲の重役達に対し、論争を繰り広げた。
その結果、燐の父親を解放することによる戦略的な価値の方が高いという判断になった。
「すごい、説き伏せちゃった」
「流石は女王様ですね」
「では、次にあなた方への2つの頼みを話します」
「あ、はい」
女王様のお願い事、1つはジュエル国への救援要請を送ること。
2つ目はこの作戦に参加することだった。
当然、俺達は断らず、その願い事を受け入れた。
「では、お願いしますね、ジュエル国への救援要請のしかたはお任せします」
「はい」
俺達は城を後にし、まずはジュエル国への援軍要請を行なうことにした。
方法はあの無線だった、普通は失礼なのだが、なにぶん今は急ぎの状態だ。
ここから届くかどうか分からないが、試すことにしてみた。
{はい、どうしました?}
「あ、ジュエル女王、実は」
俺達は無線越しに救援要請の話をした、するとジュエル女王は一切の迷いも無く了承してくれた。
{では、作戦などを聞きます}
「はい、では、咲に替わりますね」
「替わりました、咲です」
{では、作戦などをお話しください}
「はい」
咲は今回の作戦を詳しく話し出した、俺にはあそこまで詳しく説明する自信は無いな。
しばらくの間、咲は作戦を話すと、ようやく終わったようだ。
「了承してくれた、作戦の方も全力でサポートしてくれるってさ」
「よし! じゃあ、報告に行くか!」
俺達は女王様に救援の話を了承してくれたと言うことを伝えた。
すると、女王様は驚いた様子だったが、すんなり受け入れてくれた。
そして、作戦会議をしたいそうで、俺は無線を女王様に渡し、その場を去った。
どうにも作戦の最終決定はまだらしく、その時になったら伝えてくれるらしい。
俺達はその時が来るまで待機することにした。




