いつか見た少女
法助、法助という声が聞える、暗い意識の中、俺に聞えてきたのはその声だけだ。
しかし、その暗い意識の中、その声以外の声が聞えてきた。
その声は法助と叫ぶ声よりもハッキリと、明確に聞える。
「また来たんだね」
その声は後ろから聞えてきた、一切の気配も無く、いきなりそこに現われたかのような少女。
普通なら大声が出るが、今は出ない、なぜだか知らないが。
「全く、君は馬鹿だな、あの子の異変はずっと前からあったのにね」
確かにそうだ、燐は普段ならしない行動をしていた、俺を誘うなんて普通はあり得ないしな。
それに、あいつが俺に弱みを見せるのも普段ならあり得ない・・・あぁ、気付いてやれなかったな。
「いや、君は気が付いてたのか、でも、言及はしなかった、それは勝手な思い込みからかな?」
・・・・・・そうかもしれない、俺はあいつは何でも出来る奴って、思ってたからかもしれない。
だから、悩みがあってもすぐに解決するだろうと勝手に思い込んでたのかもな。
「これは僕の勝手な想像だけど、あの子は気付いて欲しかったんじゃ無いかな?
急に辛辣な態度を取ったり、普段ならしないことをしたりしてね」
でも、俺はその行動に気が付いてやれなかったのか・・・そのせいでこんなことに・・・
だが、もし気が付いたとしても、何も出来なかったんじゃ無いか?
そんな思いがこびりついて離れない。
「きっと、彼女は自分を殺して欲しかった」
は? 何で燐が自分を殺して欲しいんだ?
「仲間を手に掛けるくらいなら、殺して欲しい、彼女は多分そんな子だ
親を助けた、でも友人を殺したくない、だったら自分が死ぬ、それで親が解放されるかもしれない」
・・・こいつの言うとおりだ、燐はそういう奴だ、負けず嫌いで、プライドが高くて
誰にも頼らない、でも家族思いで、仲間思いで、誰かに頼りたいと思っている。
そんな自分に素直になれないけど、自分以外には優しい、馬鹿な奴だ。
「でも、多分山登りの時に決心したんだろうね、君を殺すって、親の為、国の為にって」
そうか、だから普段なら来そうに無いあいつがすんなり来たのか。
そして、あんな話を・・・クソ! 何で気付かなかったんだよ!
「でも、君を殺せなかった、だから君も僕も生きている」
うぐ、何だか意識がまた・・・何だか前にもこんなことが・・・
「そろそろ時間だね、やっぱり君の居場所は向こうらしい、さぁ、戻ったら?
そして、君を裏切っても殺せなかった馬鹿な姫様を助けてきたらどうだい?」
「おい! お前は!」
「前も言ったよね、僕は、君の相棒だ、いつでも君を、皆を見ている」
その言葉の後、目の前が真っ白になり、その光が消えると、そこは病室だった。
「う、ぐぅ・・・」
「法助!」
目を開けると咲の心配そうな顔が目の前にあった。
その隣には燐、恵美、先生が居た・・・しかし、燐の姿は無かった。
当然か、あいつは家族の為に俺達を捨てたんだし。
「・・・あぁ、おはよう」
「法助! 大丈夫!?」
「これが、大丈夫に見えるか?」
「大丈夫じゃ、無いよね」
「あぁ」
怪我の場所はかなり多いらしく、腕に2発、腹に2発、足に1発だそうだ。
どれも急所は外れており、俺は何とか一命を取り留めたそうだ。
まぁ、これでも腹に深い傷を受けても死なない位頑丈だからな。
「法助君、まだ深いのに聞くのは酷かもしれないけど、燐さんはどうしました?」
「り、燐は、オーブ国の幹部に捕まってしまいました」
「え!?」
言えなかった、燐が裏切ったとは・・・・・・俺には言えなかった。
もし、そんな事がバレたら、燐は傭兵部に戻ることは出来ない。
そんなのは駄目だ、あいつが戻ってきたときに帰れる場所が無いのは。
「そうですか・・・分かりました、国にはそう伝えます」
「はい」
「では、安静にしていてくださいね」
そう言うと先生は病室から出て行った、その一瞬先生の顔が見えた。
あの表情は明らかに怒りだ、もしかしたら、先生は1人で・・・
「咲、先生を、追ってくれ」
「なんで? 何か伝えたいことがあるの?」
「いや、先生は、多分1人でオーブ国に行くぞ」
「え!?」
先生もオーブ国に単身で挑んで勝てるとは思ってないだろうが、燐のこともある。
俺はあの時勝手な思い込みであいつの気持ちに気がつれなかった、だからだ。
「分かった、じゃあ、追ってくるね、もし何かあったらジュエル国で貰った無線で教えるよ」
「あぁ、頼んだ」
そう言うと、咲は先生を追いかけた。
これで先生は動きにくくなるはずだ、咲が居るのにオーブ国に行く事は出来ないはずだ。
出来るだけバレたくはないだろうしな。
「つぅ」
「お兄ちゃん! どうしたの!? 何処か痛むの!?」
「そ、そんなに心配すんなよ、ちょっと痛いだけだ」
「心配するよ! 馬鹿! たった1人のお兄ちゃんなんだから!」
素が出てるな、それだけ慌ててるって事か・・・
「先輩、何かあったらすぐに言ってくださいね?」
「わかってるよ」
はぁ、妹と後輩に心配を掛けるなんてな、不甲斐ない。
だが、今は安静にするしかない、下手に動いて傷口が開いたら悲惨だからな。




