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《小咄菊造くん》の伝播によって、一端は拡大したアマチュアのネット小説だったが。今度はそれを上回る勢いで、面白いプロ作品が多く出現した。
出版は見る間に息を吹き返してゆく。
まずは個人制作ができるマンガや文学から。テレビや映画といった映像関係は、権利関係で《小咄菊造くん》の使用を堂々と宣言できないせいか。少し遅れることとなったが、後にメディアミックス用の原作が出揃うことになる。
ストーリーの面白さが等しいならば後は、企画・描写・マーケティングでの勝負となる。そうしたノウハウは大企業に一日の長があった。
アマチュア作品はオリジナル率が減る。代わりに、共通の話題となる元ネタが増えたということで、二次創作が増えた。しばらくして二次創作は誰でもやる、普通の趣味として一般に普及する。
一方で既に技術力を持っているプロは立場が固定化され、多くのベテランとなっていった。
そんな頃。どこで調べたか、若門書房の者だという人間がウチにやってきた。どうやら《小咄菊造くん》を譲ってくれという。
値段は言い値で構わないといわれたが。もしかして、まだまだ値が吊り上げられるかもしれない。ボクは欲が出て、断ってしまった。
ならば代わりに、若門書房のアフェリエイト広告をサイトに掲載してくれないかと頼まれる。
なるほど。《小咄菊造くん》に若門書房が最初にツバをつけておく。マーキングして、他を牽制しようということなのだろう。
恐らくは新聞と夏目漱石の関係に似ているのかもしれない。つまりは文化的パトロンであり、逆の言い方をするなら飼い殺しということでもある。
若門書房が果たして、どのように《小咄菊造くん》を買い取ってまで、使おうとしたのか。まだ怪しげな存在に過ぎない《小咄菊造くん》に目を付けた、その先見性はどこにあるのか。
ボクも興味が出てきたので、アフェリエイト広告の件に関しては承諾する。
かくしてアフェリエイト収入により、ちょっとした小遣いくらいは賄えるようになった。
小さな火はこのような経緯を経て、ボクの手を離れ、国内に止まらぬ大きな炎へと燃え上がってゆく。




