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「なあアンタ、誰なんだ」

「あの子はボクの孫でね」

 よそ者の子供を指して答えた。なるほど。同国ゆえか特徴が同じだし。顔が似ていないこともない。


「違う違う、アンタに訊いている。これは何なんだ」

「ジャパニーズ・ライトノベルさ。読むかい?」

 機械から本が出てくる。背負っていたのは、この機械だったのだ。

「あの人気の!? この国じゃ手に入らなかったんだ。しかも翻訳済みかよ」

 興奮気味に手渡されたが思い直す。

「いや違うんだ」


「ポータブル・エスプレッソ・ブックマシンといってね。つまりは個人用の製本機さ。実家の印刷所にあったものでね。小型だが業務用なので強力だぞ」

「マシンの説明じゃない。何のために本を配っているんだ」

「孫と一緒に移動図書館の旅だよ」


 ようやくパウロは合点のゆく答えに出会えた。

 パウロは幼い頃、農村に住んでいた。村には移動図書館がたまに来ていたのを憶えていたのだ。

 ロバに何十冊かの本を載せ、川を越えて来るのだ。そして文盲の村を回り、少しでも識字率を高めようとする。


 ただし、本も無料ではない。大抵の場合、アメリカの富豪が慈善活動として寄付してくれる。だからネズミーの本ばかり。自分たちに関する物語はなかった。周辺に村はたくさんあり、滅多に来てくれるものでもない。読める本の量にも限りがある。

 なにより、与えられるだけの物語では満足できなくなっていた。他人に作られた物語では満足できなくなっていた。


 メディアが発達していないとはいえ。口伝で物語がひとつ、ふたつ。土地と風土から物語が生まれることもある。パウロは近隣をフィールドワークし、そうした物語を集めた。自分たちの物語を、世界に知ってもらいたいと。

 まあ、ダメだったがね。

 というのが事の顛末らしい。

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