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ならば混乱する世界の中で、日本の国内情勢はどうなったか。
スポーツ大会の連続テロ事件で入国条項が厳しくなっていたためだろう。だから難民が町に溢れるほどではないが。じわじわと日本語の話せない人が増えてきたようだ。今はまだ治安が悪化しているというほどではないが。いつか日本も他民族化するのかもしれない。
そすると当然ながら、排外主義運動も巻き起こるもの。国粋主義を謳う若者たちにより、難民が襲われるという事件が何度かあった。
そしてボクは日本の宝である《小咄菊造くん》を奪った国賊として、彼らに狙われるようになっていた。自宅に投石が絶えなくなり、ボクら家族は町を去ることにした。
妻には不便を承知で、父の故郷だった離島に引っ越してもらう。あそこなら親戚がいて面倒を見てくれるし。ああいう運動家というのは不思議なもので。船を乗り継がなければ行けないような場所となると、途端に面倒くさがって来なくなるのだ。
ボクも《小咄菊造くん》をなぜ公開しなくなったのか、理由を話せれば良かったのだけど。やっぱり日米関係を考えると、説明するわけにもいかないし。かといってチャーチベル博士も恨みきれない。ならばボクが黙るしかなかった。
ああいう輩は、個人の精妙な事情をお構いなしに、自分の気持ちをぶつけるだけ。人の話を聞こうとしないから困る。全体主義、帝国主義と変わらない。
成功体験は人を傲慢に変える。それは日本人でもアメリカ人でも変わらない。
《小咄菊造くん》の有る無しは関係ない。他人の気持ちが分からなくなったなら、そりゃ物語を見失って当然なのだ。




