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従来、アフリカは食物生産ができないわけではなかった。関税ゼロで安価すぎる輸入品に対して、農産物で商売が成り立たず、農業が発達しづらかっただけなのだ。ゆえに自給率が低く、簡単に人々が飢える。
だが今度はアメリカの不作により、食料が高騰。農家が自立。《ローカリズム》による個人農業の技術発達もあり、自給自足率は高くなった。饑餓は少なくなる。
だが相変わらず戦争は続いていた。原因はもちろん、中以国だ。
人が自由であるということは、聞く耳を持たない権利も認めなければならない、ということでもある。そして、他人の言葉など聞く耳持たない人間の集まる自由だってあるのだろう。
中以国には新たに宗教的カリスマが登場。自らをビッグブラザーと名乗って、神の名により周辺国への武力進出を激化させていた。また国内の差別や虐殺は過酷になる一方らしい。
最近はアメリカ系軍需産業の支援も受けて、日に日に軍事力は拡大している。
それにしてもビッグブラザーとは冗談みたいな名前だ。どうやらいつの間にか時代はSFを追い越していたらしい。もうボクみたいな老人には、この先どうなるか、なんて想像もつかない。
ビッグブラザーは中以国こそ地上の楽園だと謳ったが。もしも天国も地獄も、本当は心の中にこそあるのだとしたら。きっと人々の心が地上に地獄を出現させることもあるのだろう。
戦争と流血のニュースを聞くたびに、アメリカの言う通りに世界を統一した方がマシだったかもしれないと悩むのだった。




