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 大学の頃、同じゼミに所属していた友人たちから、同窓会の誘いがあった。同窓会といっても単なる、オッサンと化した男たちの飲み会だ。

 もうすっかり若さのなくなった飲み方をしながら、近況を語り合う。子供ができたのは自分だけで驚かれた。どうも皆、不況で結婚をためらってしまうらしい。

 仕事をやっていても不況で給料は上がらないのだし。将来への不安を抱いたままで、扶養家族を持つには勇気が必要だ。そこは自分が、勢い良すぎたのかもしれない。


 ところで今回の同窓会。皆、それなりに出世もしているだろうし。印刷の仕事がないかという、不純な動機もあった。けど出世どころか、明日をも知れぬ身ばかり。確かに大学卒業当時は就職難だったしなあ。いや、未だにずっと就職難なのだが。

 だから仕事の融通を頼むなど、あまりに図々しいので、切り出せなかった。当てがあったとも思えなかったし。

 けど大学生の頃のような、無茶な飲み方をして、へべれけになりながら。不意に思い出したのは、先生の言葉だった。


「書き続けなさいよ」


 翌朝、二日酔いになった頭で、ボクはひとつの決意をする。《小咄菊造くん》を公開しよう。決めたならば動き出すのは早かった。

 最初の関門は、家族の説得だ。


 ただ公開するだけではダメなんだ。自宅サーバーが必要になる。だが、サーバー構築にはそれなりの投資が必要になる。これも日本のため、出版業界のためなのだ。レンタルサーバーではいけない。これは世紀の大発明になるのだから。

 そう妻を拝み倒して、資金を捻出してもらうことにした。

 最後の最後まで父には愚痴をいわれ続けた。だが針のムシロに耐えながら、作業を行う。


 遂に、あの画面がオンライン上に表示される時がきた。

 宇宙ロケットのエンジンに点火したような気分の高揚を感じていた。実際にそれは火のようなものだったのだろう。

 小さな灯火が炎上し、燎原の火のごとく展がるまで。思い返すと、あっという間の出来事だった。

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