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 一時は高騰した穀物価格だったが。ローカリズムによる生産力向上で、みるみる値下がりした。慌ててアメリカは不作予想は外れだったと宣言したものの。既に各国の自給自足率は上昇。アメリカは在庫を抱えて、価格がダブつき。自国農家に大きなダメージを与えた。


 次にアメリカン・レーティングへの悪評から、アメリカは表現の自由がない国だというイメージを世界中から持たれてしまう。そのため移民が減少。文化的にも「新たな血」を取り込めなくなっていた。

 おとぎ話の囲い込みにも失敗。遂に、使えそうな元ネタが尽きてしまった。アメリカは自分が本当に表現したいことは何だったのか。物語を見失ってしまったのだ。


 西洋人は自分たちこそ全人類の代表だという自覚から、世界中の文化財を収集。美術館に収蔵した。収集といえば聞こえは良いが、時には略奪も行っている。

 だが帝国にとって冊封地の文化は、自分たちの所有物だ。ならば未開地に住む野蛮人の文化を、帝国の支配者たる自分たちが奪ったとして、感謝こそされても、文句を言われる筋合いはないというわけである。

 人類の最先端文化は、美術館が収蔵してこそ、初めて価値が出る……ということになっている。美術館は親切心から、未開文化の財を保存してやった。むしろ自分たちは恩人なのだ。


 しかし、まだ見ぬ異界フロンティアが尽きてしまった。帝国の文化は、支配者が自ら創るとは限らない。大半が冊封地から吸い上げてきたものばかりだ。

 すると、フロンティアの喪失は、グローバリズムにおける、文化の停止を意味する。


 戦争で残ったのは国民の疲弊と、農業工業での生産力低下。戦争のドサクサに紛れて儲けた富裕層との格差は、絶望的なまでに広がった。もはや自分たちで文化を育てるどころではない。そもそも、どうやれば自分たちの文化を創り出せるかも分からなくなった。

 歴史的に見ても、パンとサーカスを提供できなくなった帝国は滅びるもの。アメリカは圧政を敷いたつもりで、逆に「自分で勝手に作るから、もう不要になる」「求められなくなる」ことで自滅してしまった。国際的な地位を自ら手放してしまったのだ。


 悲観的になった聖書主義者から終末論が巻き上がり、次々とテロ事件が起こった。だが何も変わらない。自分の思い通りにならないからといって、世界の終わりなどやってこない。

 アメリカ国民は苦悩した。終わりもしない毎日を、どう過ごせば良いんだ。


 コンテンツ支配を諦めきれないアメリカは、焦って最後の手段に出た。恭順に従わない国に対して、IPアドレスを停止。インターネットの使用を遮断してしまったのだ。

 これは効果覿面だった。経済的な打撃も計り知れないし。再び、物語を失う国もあった。

 だが諸刃の剣でもあった。IPアドレスはアメリカの、とある組織が管理を行っている。平等を名目に、管理権を手放さなかったが。侵略意図があったと世界に表明してしまったようなものだ。国際社会の激しい非難を受け、以後は国連にIPアドレスの管理権が委譲される。


 ところで、この頃。《小咄菊三くん》の物語検索ボットが使用できなくなった。どうやら遮断されたらしい。まさに目の敵だ。

 だが既に、有志による事典でも参照すれば充分なまでに、内蔵辞書は出揃っている。痛くも痒くもない。

 この後に起こった事件に比べれば。

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