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 いちおうアメリカではアメリカなりのローカリズムが発生。結果として人種差別が復活しようとしていた。といっても表だって白人が有色人種を虐げるわけではない。

 超格差社会を利用して、一部の富裕層のみに財産が集中する仕組みが強固で揺るぎないものになりつつあった。そして富裕層には、なぜか白人が多く、なぜか家督で財産を受け継ぐという場合が多かったというだけの話だ。


 するとハリウッドの映画大学を卒業するには、高額の授業料を支払わなくてはならない。自然と映画関係者は名家の出身が多くなり、人材が硬直化していった。

 作家組合や監督組合がハリウッドの雇用を独占。世界的には映画撮影のコストは安価になっているというのに。ハリウッドではスタッフへの報酬が高額化。一作撮影するためのリスクも高くなっていった。

 ハリウッドは明らかにシステム不全を起こしていた。だが元からいる人材が大きな発言力を持ってしまい、構造改革できない。


 恐らくは、過去の成功体験を捨てきれなかった。まだ危機感が緩かったのだろう。

 ハリウッドは若門書房ならば与しやすいはずと、甘く見ていた。また食い物にできるはず。日本コンテンツというだけで売れているのだからと、日本の昔話を次々と勝手にリメイクしだした。

 だが現代アートで起こったのと同じ現象が、再び起こる。わざわざリメイクするくらいなら、だったら最初から日本のコンテンツを視聴すれば良いじゃないかと。


 ハリウッドは日本の昔話をリメイクすることで、余計に日本コンテンツの認知度を高めてしまう。影響を受け各国はこぞって、自分たちの昔話を発掘。ローカリズムをより補強していった。

 日本コンテンツからヒット作をリメイクする作戦も失敗した。ヒット作が多すぎる。「使い潰す」ことができない。


 気がつけばハリウッドは独自企画が少なくなっていた。リメイクは日本に追い風を吹かせるだけになってしまう。日本を食おうとして、逆に食われてしまったのだ。


 ここに至って、ようやくハリウッドは認めざるを得なかった。《神話シート》の敗北を。

 本当はアメリカから天才レベルのクリエイターが出現していないわけではなかった。だが独自に表現活動をやっているだけの天才がいても、映画大学の出身とは限らない。大学を卒業していない貧困層出身者や非エリートは、組合に参加させるわけにはいかない。

 ハリウッドの作家組合は自力のみでは《小咄菊造くん》にも、他国の天才にも勝てないと知りながら。だが《神話シート》を使い続けるしかなかった。


 そうした事情を考慮した上でも、なぜかアメリカでは天才の出現率が低い。どうやらローカリズム下における天才の出現条件には、国の歴史が関係あるようだった。

 長い歴史を失わず伝えてきた国ほど、天才が現れやすい。代わりに新興の、それも理念が先行して築かれた、例えばアメリカや中国のような人口国家ほど、天才はなかなか現れなかった。

 中国は文化大革命によって、いちど過去の伝統を破壊し尽くしている。その意味で、歴史の短い人口国家といえた。


 ハリウッドは従来のように、他国の文化を吸い上げようにも、各国が勝手に作品化・流通させてしまう。国内からは天才の出る気配はない。あるのは大資本を投入しての、美麗なCGのみ。打開策がない。

 ハリウッドは完全に追い詰められてしまった。

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