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ローカリズムで自信を取り戻した日本。と共に地元も賑やかになっていた。町内会ですっかり遅くなった夜。帰宅すると玄関で父が出迎えてくれた。珍しい。
「最近ここらの景気が良くなったのは、お前の仕事だって聞いたんだが、本当か?」
父からボクに話を振ってくるというのも珍しい。ボクは「ああ」と濁した形で肯定の返事をした。実際、凄いのはボクじゃないしなあ。
「ウチは紙を扱う印刷屋だってのに、息子がコンピューター屋かよ。別んトコで出世しやがって」
また愚痴かと思ったら父は意外にも笑顔で、
「お前はお前で、自分の仕事を成し遂げていたんだな」
とだけ言葉を残すと、さっさと寝室に戻ってしまった。その翌朝、父は布団に入ったまま、ポックリ逝っていた。
ボクが知らなかっただけで、どうやら父は人望があったらしい。商店街中の人間が集まったかのように盛大な葬式が終わり、数ヶ月して落ち着いてきた頃。《小咄菊造くん》がハッキングされる。
データを盗まれた痕跡を見つけてから数日後、お隣の国で重大発表が行われる。なんと自分たちも《小咄菊造くん》に匹敵する、物語生成プログラムを開発したというのだ。
だが公開された「それ」は、全く動作しない。お隣さんは慌てて公開を停止した。
実はボクがレンタルサーバー上で公開しているプログラムは、リクエスト受付フォームと、生成された物語テキストを表示する機能しか持たせていない。
そのプログラムが、物語生成プログラムが搭載されている自宅サーバーとテキストデータのみを送受信。物語生成プログラムには誰も直接、アクセスできないようにしてある。
どうやら、お隣の誰かさんは、テキスト表示プログラムのデータだけを盗んだらしい。そりゃあ物語が生成されるわけない。
盗人は世界で散々な笑いものになった。
しかし被害こそなかったものの、ハッキングによりボクは大事なものが冒涜された気分だった。
腹の立ったボクは《小咄菊造くん》をバージョン2にアップデートすることに決めた。検索ロボットが自動でネットや、創作系SNSを巡回。勝手に内蔵辞書のデータベースを更新する。いわば、最新の流行に対応する《小咄菊造くん》だ。
かくしてローカリズムの流れは加速した。反面、ローカリズムに対応できない者を出してしまった。ローカリズムの光が照らせない、影がより濃くなる。




