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 果たして全世界で同時多発的に起こった、これら現象の正体とは一体、何だったのだろうか。


 そもそも当時は、インターネットの発達により全世界、誰でも等しく教育を受けることができるようになった結果。全世界的な、教養の価値暴落が起こっていた。

 教養があるから、高度な職業に就けるはず。だが高度な職の当てなど、そうそうあるものではない。大学卒業相当の教養を得ても供給過剰で、若者の就職率が世界的に低くなっていた。

 だから高いリテラシーを持ちながらも、暇を持てあます、世界中の若いインテリがまずは日本コンテンツに飛びついた。そして誰もが作家を目指した。


 流行の発信源が日本ゆえ。世界中のクリエイターにとって、「いま日本で何が流行ってる?」が合い言葉になった。

 何か面白いことをやってないかな、と思ったら日本を調べる。《小咄菊造くん》があるから、日本では面白いことを必ずやっている。

 しかも、日本国内では《小咄菊造くん》のために、アイデア勝負でしか他と差をつけることができなくなっている。だから常に、今まで見たこともないような、新しいことをやっている。


 《小咄菊造くん》に関して判明している謎は少ない。日本語に秘密があるらしい、という程度だ。

 仕方がないので教材として、日本語の童話や御伽噺、日本文学も研究された。結果、因果応報や勧善懲悪の教えまで浸透。世界中で少しだけ、モラルが向上した。

 ……御伽噺に《小咄菊造くん》の秘密があるのかというと……確かに影響は受けていたのかもしれないなあ。なにせプログラミングした当人のボクが日本人だから。


 共通の話題を得て、ちょっとだけ戦争や麻薬中毒患者は少なくなり平和になる。そして国を超えてクリエイター同士の切磋琢磨が行われた。

 日本人に代わって、新たな表現様式を生み出す者、日本以上の巧みさがあるマンガ・アーティストが出現する。やがて《小咄菊造くん》を使わずとも、負けじと頑張って面白い物語を作れる者も世界各地から出てきた。

 なにせ《小咄菊造くん》はしょせん、「期待の新人」程度に過ぎないのだから。真の天才には敵わない。


 《小咄菊造くん》に負けぬ才能を持った天才クリエイターは、それぞれの国で英雄扱いされた。

 かつての敵国でも、萌えてしまったら攻撃しづらくなる。ひとりの天才は、最新鋭戦闘機一機分に匹敵する国防力を有すると評した学者もいたほどだ。流石にその説は馬鹿なとは思うのだけど。


 各国はこぞってクリエイターを育成した。しかし。かの偉大な音楽家が自ら「貴族は大勢いても、ベートーヴェンはひとり」といった通り。才覚は人格に宿る。資金や軍事力とは関係なく、天才は出現した。

 どうすれば天才レベルのクリエイターを育成できるのか。わからない。やはり偶然に頼るしかなかった。

 そんな中で《小咄菊造くん》だけが安定して世界を相手に大暴れしているという。これが世界の現状だ。


 以上のような、まずは日本を手本に二次創作。やがて自分が住む歴史風土に合った物語を、自前で作ろうという運動。後の歴史に今の時代を「ローカリズム」と呼んだ。

 かつてハリウッド映画が目指した「ネヴァー・ビフォー・シーン・イメージズ」すなわち「これまでに見たこともない風景」という意味で。ローカリズムこそ、未だ誰も見たことのない景色。新時代の到来だった。

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