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やはりインド経由で日本コンテンツが押し寄せることにより、ロシアも変化があった。
影響を受けてロシア文学が復活。民族主義が隆盛を遂げた。そして驚くべきコトに、長期に渡ってロシア大統領をしてきた男が、国王を宣言したのだ。最初は国際社会の失笑を買ったこの事件だったが、意外にロシア国民は王の戴冠を支持した。
ロシア国王は宮殿を建設。宮殿といっても帝政ロシア時代の復元に過ぎない。一種のテーマパークのようなものだ。ロシアは現在、世界で起こりつつある流行を良く研究していた。
ロシア国王といっても実質の権威はない。なのに王を名乗ったのは、一種の演技。民族という物語の主人公を演じていたのだ。
狙いは的中。豪華絢爛なロシア宮殿に世界中から観光客が殺到。建築費以上の観光材料となった。
しかもロシアはガス資源によって経済的に立ち直ろうとしていた矢先。強固な精神的支柱も得て、国体が長期に渡って安定することとなる。
そして日本コンテンツの波は遅れて、最後にアフリカと南米に達する。
アフリカは偉大なミュージシャンを多く輩出しながらも、自力で流通を持てない。人脈も資金も足りない。必ず欧米を介してないと世界へ進出できないというジレンマがあった。だが、保護者を気取っているくせして、アフリカを蔑視している欧米は正直気に入らない。
そこに若門書房の作り上げたネットワークが到来する。ココならば良い曲さえ作れば世界に届くはず。
アフリカのミュージシャンはメジャーと通さず、プロモーションビデオすら自分で撮影し、何でも独力でやってしまい、世界に羽ばたくようになった。
難しいのは南米だ。北米アメリカとの距離が近く、しかも地続きで、影響を大きく受けている。テレビならば何とか自国で頑張っているのだが。映画に関してはハリウッドに押されて壊滅。むしろハリウッドのおかげで庶民は映画を鑑賞できているという有様だった。
一方で庶民は高価すぎる正規版DVDに、なかなか手を出せない。代わりに安価な海賊版DVDが麻薬と共にマフィアの資金源になっているという社会問題もあった。
かつてのヨーロッパも国ごとに交流を持とうとしなかったが、南米はもっと深刻だ。スペイン語が広く使われているものの、互いの文化交流が全くといって良いほどない。ブラジルだけは映画産業が元気だったものの、ポルトガル語を使っているので南米で孤立してしまっている。
唯一、ハリウッド映画のみが南米のどこでも流通していた。
そんな中、ブラジルが自国コンテンツの世界進出を図り、インドと提携。インドを経由して日本コンテンツも流入してくる。若門書房との協力で独自のコンテンツを制作。それら面白い物語に、人々は夢中になった。
喩えるなら、麻薬に代わる刺激としての、読む麻薬のようなものだ。ライトノベルを読むために文字を憶える。日本のドラマを見るために日本語を覚える。読み書きを憶えるたびに、新たな刺激が得られる。
麻薬中毒患者数がほんの少しではあるが低下した。そして、いつの間にか文盲率が減少していた。
負けじと他の南米各国も自国産映画に注力。麻薬市場の縮小により、マフィアはエンタテイメント業界へと転向していった。合法な世界へ移ったことで彼らは表だった暴力事件を起こさないようになり。治安も気がつけば改善されていた。




