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 《小咄菊造くん》によって日本から発信される流行に、まっさきに飛びついたのは台湾だった。台湾はもともと親日家が多く。また若者を中心に日本文化に慣れ親しんでいる。台湾の日本接近は当たり前といえる。


 そんな台湾も多くの問題を抱えていた。「ひとつの中国」を標榜する中国から常に軍事的圧力を受けている。最近は経済的な交流も生じてきたが。同時に、中国企業による通信や社会インフラの買収劇など。危機感も増していた。一時は中国系企業によって台湾のインターネット接続が支配され、言論の自由を失いかけた事件すらあったのだ。

 だが今まで独立国であると主張はしていたが、中国と台湾との間に言語障壁がない。何も問題なく交流できるゆえに、侵略的な意図も全て行き来できてしまう。


 そこへ親日家が新たに登場し、台湾国内の日本語人口が増える。もとから台湾には日本語由来の単語が多くあり、導入は難しくなかった。そして台湾語は少しだけではあるが、中国語から離れて独自に進化。

 この、ほんの少しの言語障壁が、台湾人に民族としての一体感と、独立心を与えた。


 ほか、インドネシアを中心とした東南アジアも、日本コンテンツの流行により、親日感情が強化。外交的な日本接近が多くなる。結果、中東の産油国から日本までのシーレーン強化へと繋がった。

 面白くないのは中国だ。東南アジアから台湾までの結束が固くなると、中国は大洋へ進出できなくなってしまう。


 世界の工場として急速な近代化を遂げた中国だったが。人件費は高騰化。人治主義で契約を守らない土地柄にウンザリした外資が次々に逃げる。そんな中で世界不況は起こった。

 このままでは世界一の人口を支えるだけの、食い扶持が稼げない。かといって長い一人っ子政策のために、人口動態は若者不足の高齢化社会になっている。若者不足で、世界に安価な労働力を提供できない。


 地下資源目当てで武力侵攻したチベットも、人材と技術を持っていないので、独力で加工することができない。かといって外資に資源を任せては儲からない。

 チベットはむしろ、少数民族が起こす独立運動という、内乱の火種にしかならなかった。しかし「ひとつの中国」を標榜する政府としては、今さら手放すわけにもいかない。


 工場はとっくに、人件費の安い東南アジアやアフリカへ移転してしまっている。国内産業で食い扶持は稼げない。とすると、中国は更なる領土獲得で、新たな資源を得る必要があった。

 しかしチベットの先には、若者が多く、今や中国以上の勢いで経済成長を遂げるインドが待っている。北には大国ロシア。すると行き場は太平洋しかなかった。


 中国は東南アジア各地領海で武力衝突を起こしだす。台湾への軍事的経済的な圧力も強めた。

 世界の工場として中国は、今ではアメリカ経済界からも立派な市場として認められている。無茶をしても、議員へのロビーにより制裁は甘いだろう。アメリカさえ押さえれば太平洋進出は不可能でないはずだった。


 だが見合わせたかのような、不自然なタイミングで東南アジア、台湾、インドと中国周辺国の結束が固くなった。中国共産党指導部は恐怖する。太平洋進出が不可能となれば、逆に中国の方が海上輸送路をたやすく封鎖されかねない。

 特に国防的、覇権的にも台湾が欲しかったが。台湾国内の放送や通信会社を買収し、言論の自由を奪う計画を立案。だが拙速すぎて失敗。逆に台湾国民の危機感を煽ってしまい、より固い独立心が生まれてしまった。


 世界で何が起こっているのか。理解できずパニックになる中国。どうやら、にわかには信じられないが、《キクゾー》とやらのせいで日本コンテンツが流行しているせいらしい。

 慌てて中華コンテンツ戦略に注力するも、ことごとくインドに弾き返されて頓挫。かつてハリウッドの映画館建設計画に嫌がらせをしていたため、アメリカの協力も仰げない。

 発想は規制がかかっている。映像はハリウッドに負ける。ストーリーでは《キクゾー》に勝てない。どのみち手抜きが酷く、グローバル市場には通用していない中華コンテンツだったが。中国はメンツを潰された形になる。


 日本コンテンツは、帝国主義日本による思想的侵略であると中国政府は発表。中国国内から若門書房系の創作SNSにアクセスできないようアクセス遮断。日本コンテンツも追放した。

 それでも不法ダウンロードによって、日本コンテンツ拡散は止まらない。業を煮やした中国政府は「ポルノとの戦いのため」と称して唐突に、海外とのインターネット接続を全面切断してしまった。

 おかげで銀行金融はパニックに。経済に与える影響の大きさに、慌てて一日でネット接続は回復させたものの。中国国内に与えた損失は計り知れないものがあった。


 コンテンツの部門でアジア進出したい。だが成果がない。創作の現場では、もっと自由にやらせてくれないと、良い作品が出ないと不満が噴出している。だが中国共産党中央宣伝部は規制を緩めるつもりがない。

 中国では若門書房系の代わりに独自の創作系SNSを開設したが、ほとんど参加者が出てこず、廃れている。


 経済は「門戸開放」によって発達した。だが言論や表現では「開放」がないまま。日本にメンツを潰された中国により、環太平洋各国への軍事的緊張は日に日に高まることとなった。

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