1
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・国家・作劇法とは関係ありません。
※
本当は童話作家になりたかった。子供たちが喜んでくれたらと思っていたのだけど。
だが、どうやらボクには作家になる才能がなかったらしい。
才能といっても、いろんな解釈がある。
まず文才の程は人並みだった。発想力も平凡。無難というか、どこかで見たことのあるような作品しか書けない。大学四年間を頑張って、頑張って、そんなトコ。
とてもではないが、今すぐプロの作家としてやってゆける実力なんて、とてもとても。
だったら努力できるのも才能のうちなんていうけれど、努力する才能は持っていたのか。ボクはどんな辛い練習でも耐える自信はある。もっと時間をかけて文章修行さえすれば、それなりの実力は得られたのかもしれない。
けど先日、実家から電話があり、ボクには作家になる勉強なんてやってる猶予など失われたことが告げられた。
運も才能のうちだったら、やはりボクには作家になる才能がなかったというわけだ。
いや、それ以前の問題かな。
面白い小説さえ書ければ作家になれる。ただ、ひたすらにそう信じ込んできたけれど。まさか自分の創作物の出来が良すぎて、心が折れてしまうなんて。想像もしなかった。
こんなにもヤワな精神力で作家が勤まるわけもない。やはりボクには向かなかったのだ。
結局ボクは大学四年間かけて、何も手にすることができなかった。けど卒業だけはできるのだ。贅沢はいってられない。
自分で自分に言い訳する毎日の中。宙ぶらりんのまま、ボクは大学を卒業しようとしていた。




