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●6 あっけない超宇宙的戦闘

 



 イシュタルは初っ端からトップギアだった。


「イッくぜぇ――――――――ッッ!!」


 戦闘モードの彼女を核とする炎龍が宇宙空間に咆吼を轟かせ、その背の皮膜翼を猛然と開く。細かい火の粉がオーラの如く全方位へ飛び散った。


 劫火に包まれたイシュタルが両腕を腰の横に構え、勢いよく身をたわめる。するとその両腕に、火焔の中にあってなお濃く見える濃縮された炎熱が生じ、やがてそれは物質化した。


 それはあまりにも無骨な、両腕を覆う巨大な赤い籠手ガントレット――殴り殺すための武器だ。


「ブ・チ・ノ・メ・ス!」


 今にもレーザーを放ちそうな瞳でそう宣言すると、イシュタルは何もない空を蹴った。ガツン、と見えない力場を踏み、前へ一歩。そこから一気に加速して宇宙空間を疾駆。


 瞬く間に彼我の距離をゼロにする。


「あなたを制圧します」


 熱く滾るイシュタルの声音とは反対に、迎え撃つキララのそれは背中から生えたドライアイスの軋りにも似ていた。心なしか体表を走る幾何学模様の蒼い輝きも冴え冴えしい。


 宇宙に広がる巨大な氷の樹形図に、一度、虹色の光の波紋が広がって消える。


 前方へかざしたその両手に氷の結晶体が生まれたかと思うと、それは瞬く間に伸長し一本の槍の形をとった。刹那、氷が弾け飛び、中から物質化された武器が姿を現す。それは洗練された修飾を持つ流麗な形状の蒼い三日月斧バルディッシュ――敵を両断するため斬撃だけに特化したポールウェポン。


「おおおおおおおッ!」


 肉薄したイシュタルが巨大な拳を振りかざし、突っ込んできた勢いに乗せて一撃を繰り出す。濃密な炎を纏った拳は、突如として巨大化。比喩ではない。インパクト寸前で物理的に膨張したのだ。


「――――!」


 キララは鋭い呼気と共に三日月斧を振りかぶり、眼前に迫る巨人が如き拳に叩き込んだ。極限まで冷却され白く染まった刃が彗星のごとく尾を引く。


 激突。


 バカげた温度差に蒸気爆発が発生した。


 だが二人はその衝撃波を、イシュタルは炎龍に、キララは背の樹形図へ伝播させて受け流した。


 時間が一瞬、凝固する。


 お互いの視線が交差した。


「「――ッ!」」


 もはや声もない。瞬き一つほどの硬直が解けた瞬間、二人は爆竹のごとき勢いで連続打撃を打ち合い始めた。目にも止まらぬ速度で必殺の一撃を連発する。


 互いの攻撃は重なる都度その威力を増していく。激突の際に生じる波動も一合ごとに巨大化し、宇宙空間を駆け抜けていく。


 未来において情報存在である二人にとっての戦いとは、即ち情報改変の演算力の勝負である。


 強大な情報改変には膨大な演算が必要になり、そのためには時間がもっとも重要な要素ファクターとなる。時間をかけて演算を重ねるほど、現実を改変する力は強くなる。


 故に二人の物理的な力は、戦いの時間が経過するほど高まっていくのだ。


 数秒で千以上の打ち合いを果たした二人は、どちらからともなく飛び退いて互いに距離をとった。


 次に先手を取ったのはキララだ。


「殺すつもりはありません。受肉したその身体を永久的に凍結させて封印します。諦めてさっさと未来へ戻ってください」


 肉弾戦で戦っている間も伸長を続けていたドライアイスの樹に、鮮やかな波紋が走った。


 無数にある枝の先端から、小さな氷の塊が吐き出された。それは生まれた途端に宇宙空間を妖精の如く飛び回り、無秩序な軌跡を描く。やがてその動きは統一され、整然としたものへと変わっていく。その過程で氷塊は次第にその身を大きくしていき、終いには二階建てバスすら飲み込むほどまで成長した。


 幾百もの巨大な氷の砲弾を付き従えたキララは、その目的を一言で宣言した。


「まずは押し潰します」


 全ての氷弾が尾を引き、美しい螺旋を描きながら撃ち出される。それはどこか、長時間露光写真の星が描く軌跡のようにも見えた。そして、それら全てが収束する位置にイシュタルがいる。


「――はっ! しゃらくせぇ!」


 銀髪の少女は迫り来る膨大な質量を嘲笑うと、籠手を纏った両腕を前方へ突き出した。


「おるァッッ!!」


 叫び、気合充填。炎を帯びた籠手がさらに巨大化し、巨大化し、巨大化し――


 そこに出でたるは、高層ビルにも匹敵するスケールまで膨張した大きすぎる一対の籠手――いや、火球。


「ブチ砕けええええぇッ!!」


 籠手とイシュタルの腕の結合部から爆炎が噴き出した。


 次の瞬間、二つの火球が尻を蹴っ飛ばされたような勢いでカッ飛ぶ。


「叩き潰します」


 キララの放った氷塊もまた、宇宙空間を翔けながらその身に厚く厚く氷を重ね、質量を増していた。


 流星雨のごとき氷の砲弾と、小型の太陽のような火球とが、両者の中間でぶつかり合う。


 爆発。


 その結果を見届けることなく、キララの背中の氷の樹形図が虹色の波紋を放ち――


 そして、イシュタルを内包する炎龍がさらなる膨張を続け――


 戦いは加速度的に激化していく。




 ●




 視界の中で、太陽と彗星がぶつかり合っていた。




 昔のことを思い出す。


 思えば、この家に複数の人間――厳密には人間とは言い難いが――がいて、言葉を交わし合うなど一体何年振りだろうか?


 夏緒は、両親との想い出をほとんど持っていない。


 というより、両親と名乗る男女が、一応は自分の産みの親であるという認識はあるのだが、その実感がまるでない。夏緒の父と母は、彼が物心つくより前からよく家を留守にしていたからだ。




 太陽はイシュタルで、彗星はキララである。




 今時珍しい『神秘学者』の両親は夏緒が生まれる前から世界中を飛び回っていて、ほとんど家どころか日本にさえ根を生やしていなかった。


 なのに何故、日本のこの街に居を構えているのかと言えば、ここが二人の故郷で、かつ母の遠い親戚であり幼き頃からの親友である西浦の家があるからだ。


 流石に夏緒が赤ん坊の頃は大人しく国内で活動していたらしい。だが、それでも二年程度で我慢しきれなくなり、両親は夏緒を西浦の家に預けて海外へ飛び出して行ったという。




 二人の戦いはもはや人間のレベルを超えていた。いや、地球規模すら遥かに超越していた。イシュタルは巨大な熱量の権化と化し、対するキララは惑星大の氷塊となってその質量を武器として戦っていた。




 一度だけ、両親が夏緒を外国に連れて行ってくれたことがある。


 その時もほとんど親子らしい想い出がなかったため、夏緒の中ではどことなく『両親と名乗る大人二人との旅行』という感じだった。


 そして、それが最初で最後の旅行だった。


 夏緒が一緒にいると超常現象が起きない――そんな言葉が記憶の隅の方に、けれど粘ついたコールタールのようにこびり付いている。


 当時は何の話かもわからず、自分のどこが悪かったのもわからなかった。だから思った。自分は駄目な子供だったのだ。だから隔離されたのだ、と。


 捨てられた、とまでは思わなかった。両親は一応、年に何回かは家に帰ってきていたから。だが、それがより一層、自分が彼らにとって【捨てに捨てられないお荷物】であることを感じさせた。


 思いは、いつしか諦めに変わり、諦観と達観を経て、自分には両親などいなかった――そう思うようになった。




 宇宙空間を舞台とする戦いはさらにエスカレートし、ついに太陽系レベルすら超えた。イシュタルは【複数の太陽を従え】、キララは【流星雨のような彗星群を扱い】始めた。


 超新星爆発スーパーノヴァ級の現象が連続していく。




 だから夏緒はもう彼と彼女を『父さん』とも『母さん』とも呼ばない。側にいない時は『あいつら』と呼び、本人達を前にした時は『あなた』と呼ぶようにしている。どうしても呼びかけなければいけない時だけ、二人の下の名前にさん付けしているが、それとて出来る限りしないよう、家に戻ってきた時も極力近付かないようにしていた。


 皮肉なことに、今ならあの時の言葉の意味がわかる気がする。


 両親の追い求める超常現象が、もしキララ達が目の前で繰り広げている情報改変と同じものであったのならば。


 それは間違いなく〝ギンヌンガガップ〟の前では〈正常化〉されてしまい、発現することはなかっただろうから。


 ある意味、彼らの判断は確かに正しかったのだ。




 それにしても、ここは宇宙のどのあたりなのだろうか?


 天文学に詳しくない夏緒にはよくわからない。


 これだけの規模の宇宙現象が連続して起こっていては、地球など一寸の虫のようなもので、巻き込まれたらひとたまりもないはずだ。


 現状、自分が大丈夫なのだから問題はないのかもしれない。


 しかし、自分が何ともないのはただ〝ギンヌンガガップ〟のおかげで、実は既に澤城邸の外は全て破壊し尽くされているのかもしれない。


 夏緒一人だけが、今のようにただポツンと宇宙空間に漂っているだけなのかもしれない。


 ――考えるだけ無駄だな。


 早々にその結論に至った。どうせ後で自分がこの空間を解除すれば、全ては元通りだ。気にするだけ時間と精神の無駄遣いである。


 それにしても昔のことを思い出すのも我ながら珍しいな、と思いつつ、夏緒は手探りでコーヒーの入ったマグカップを探した。夏緒にとってこの空間はあくまで視覚だけのもので、実際には家のリビングにいるはずなのだから、理屈で言えばカップを掴めるはずだ。


 昔のことを思い出したのはおそらく、現在進行形で眼前に広がっている光景のせいだろう。目にしているものがあまりにも非現実的すぎて、心が無意識に現実逃避したのだ。そして、逃げ込んだ先がたまさか過去だったというわけである。


 夏緒は思う。自分はなんてちっぽけだったのか、と。この広大なる宇宙空間、生まれては消えていく星々。そんな中、ちっぽけな星のちっぽけな国のちっぽけな街のちっぽけな地域に生きている自分など、矮小も矮小、塵とですら比べてなお小さい存在だ。薄情な両親の元に生まれてきたことを恨むのも、それを理由に心を閉ざすのも、なんだかバカバカしくなってきてしまった。


 と、このように夏緒がアイデンティティー崩壊の危機を迎えていたところ、その指先が、こつん、と不可視のカップに当たった。


 コップが倒れ、ばしゃりとテーブルに広がった感触。表面積を増したコーヒーの放つ芳香が、夏緒の鼻腔をくすぐる。


「――。」


 ぶち、と頭の中で何かが切れる音がした。自分でも何故この程度のことで堪忍袋の緒が切れたのかよくわからない。とにかく、他者に視覚を強制的にねじ曲げられ妙な光景を見せつけられた挙げ句、インスタントとはいえせっかく入れたコーヒーを零してしまったという状況に、猛烈に腹が立ってしまったのだ。


 目に見えないソファに座った状態で、夏緒は改めて顔を上げ、周囲を見回した。


 二人の姿などとっくの昔に見えなくなっている。間違いなく光年単位で夏緒のいる場所から離れているはずだ。今や夏緒が視認できるのは、彼女らの戦いの様子だけ。それも二人が生み出したであろう常識の埒外にある【現象】だけだった。


 なにせ宇宙規模の戦いだ。ダイナミックな天体観測である。


 だというのに、戦う二人の声だけはしっかり聞こえてくるのである。これは夏緒のいる空間が実際は一戸建てのリビングであるため、少年にだけはその法則が適用されて彼女らが近くにいるかのごとく聞こえてしまうのだろう。




「消えろ失せろいなくなれ蒸発しろ消失しろ消散しろむしろ焼失しろ!」


「うざいですうるさいですやかましいです苛立たしいし煩わしいし忌々しいし胸くそ悪いんですよ」




 お互いに声が聞こえ合っているのかどうかは知らないが、とにかく攻撃の手も【口撃】の唇も緩めずに二人は争っていた。


 もういい加減にしろ。


 夏緒は右手の人差し指をピッと立て、


「おい、先にこの指にとまった方を好きになってやるぞ」


 と言った。


 その途端だった。


「「――ッッ!?」」


 二人は文字通り光よりも速く夏緒の元へ飛び帰ってきた。


 そして、二人ほぼ同時に夏緒に触れて動けなくなったのだった。






「お前らは本物のバカか」


 宇宙空間ごと部屋中を覆っていた霜も焦げ痕も消え失せ、普段通りの澤城家のリビング。


 腕を組んで仁王立ちしている夏緒の前に、少女二人は正座させられていた。


 キララとイシュタルが引き起こした現象はもちろん〝ギンヌンガガップ〟の力で帳消し済みなのだが、唯一、それが叶わない事象があった。


 零れたコーヒーである。これは他でもない〝ギンヌンガガップ〟の夏緒が起こした現象であり、情報改変によるものではない純粋な物理現象であるため、キャンセルが効かなかったのだ。勿論、大元の原因は夏緒の視覚を奪ったキララとイシュタルにある。


 ただ零れただけならばまだいいが、それがテーブルを伝い流れて絨毯に染みこんでしまったものだから、ただでさえ二人の行動を腹に据えかねていた夏緒はマグマの如く怒っていた。


「どれだけ俺を怒らせれば気が済むんだ、お前らは」


 低い声で夏緒は言う。もはや疑問系ですらない。確認でもない。ただただ言葉のナイフを、足元で項垂れている少女達のつむじへと突き刺していく。


「ご、ごめん……なさい……」


「…………」


 主人に叱られた犬のようにしゅんとするキララと、相反して、むっつりと黙ったまま唇を尖らせて視線を逸らすイシュタル。


 何故だかどちらの態度もひどく気に障った。


「この際だからはっきり言っておく。自分で言うのも何だが、俺の性格は最悪だ。自慢じゃないが冷血漢やら人間のクズやらと陰口を叩かれることも多い。そもそも女にも男にも――人間に興味がない。当然、恋愛にもだ」


 本当に、自分で言うのも何だが、な台詞である。だが夏緒は自信満々で断言した。


「つまり、俺がお前らを好きになることも、ましてや結婚するなんてことも絶対にない。お前ら、未来から来たくせにその程度のこともわからなかったのか」


 夏緒の辛辣な言葉に、金色のふわふわした髪も短く切り揃えた銀髪も揺れることはない。


 夏緒はとうとう核心的な一言を放つ。


「――そんな俺に『好きになってくれ』だの『結婚してくれ』だの言ってくるお前達の目的は、一体何なんだ」


 言った直後だった。


「「……えっ?」」


 と声を重ねて、二人は普通に面を上げた。少し驚いたような二対の瞳が夏緒を見上げてくる。次いで、彼女らはコーンフラワーブルーとピジョンブラッド・ルビーの視線を絡め合わせ、


「……キララさん? あなた、もしかして……言ってなかったんですの?」


「えっ、い、イシュタルさんは? ボク……てっきりイシュタルさんが説明したもんだと思ってたんだけど……」


 この会話で、どうやら二人には共通の見解があるらしいことはわかった。


 やはりどうにもきな臭い。


「おい、お前。そこの金髪」


「は、はいっ! ……キララです……」


 顎で差しながら呼びかけると、キララはそれこそ学校の先生に呼ばれたかのような勢いで姿勢を正した。小声でこっそり囁いた自己主張は無視する。


「お前確か、この時代に来て俺と接触したのは〝ギンヌンガガップ〟の調査のためだって言ってたはずだな」


「う、うん…………う、嘘じゃないよ……?」


 そう言いながらもキララの目は宙を泳いで夏緒の視線から逃げ惑っていた。


 夏緒は舌鋒をイシュタルへ向ける。


「おい銀色、お前もそうなんだな」


「…………」


 イシュタルは無言のまま答えない。面も上げようとはしない。


 やはりおかしい。


 彼女らのこれまでの言動を総合すると、どう考えてもその目的が『〝ギンヌンガガップ〟の調査』であるとは到底思えない。それほどまでに二人が『夏緒に好きになってもらう』あるいは『夏緒と結婚する』ということに拘っているのは、先程の戦闘の結末を見ても明らかだ。


 夏緒は両眼を細めて自称『未来人』を見下ろす。


 あやしすぎる。絶対に、何か裏があるはずだ。しかしこの様子では、ただ言及するだけでその【裏】を素直に白状するとは思えない。


 駆け引きが必要だった。


「――その〝ギンヌンガガップ〟の調査に、どうして俺に好かれることや結婚するだの云々が関係してくるんだ? 言っている事とやっている事がチグハグすぎるぞ。わかっているのか?」


 まずは強い押し。予想通り、二人は顔を逸らしたまま何も答えない。


 ならば、一度引くのも手だ。タイミングを見極める。


「……正直に言うぞ。率直に言って、お前らは迷惑だ。嘘も誇張も冗談もなく、俺は本気で迷惑している。今日一日だけで俺がどれだけ嫌な思いをしたかわかるか? お前らは俺の平穏を奪っているんだぞ」


「……ごめんなさい……」


 殊勝に謝るキララだが、それは同時に考えを改めるつもりがないこともまた示していた。


 夏緒はわざとらしく、ふー、と溜息を吐いてみせる。


「……ここまで言っても、お前達は目的を果たすまで俺の周りをチョロチョロし続けるんだろ?」


 二人は無言。この場合の沈黙は、肯定の意味としかとれない。


 ここが引きどころだ。夏緒は意識的に声音から険を落とし、


「――なら、もういい。早く済むなら俺も協力してやる。だから、話してみろ」


「……えっ……?」


 虚を突かれたキララが、瞬時に理解できなかったのか、目を合わせてキョトンとする。


 言葉が頭に染み渡るまでの間が空く。


 反応は劇的だった。


「――本当ですね真実ですね本音ですね!?」


「――マジかテメェ嘘だったら承知しねぇぞコノヤロウ!?」


 二人同時に立ち上がる。


 どちらも体表に光る模様が浮かび出て口調が変わるほど驚いていた。


 自分が譲歩したのがそんなに意外か。自業自得とはいえ、得も言えぬチクチクした感情が肺腑を突き刺して眉根を深く寄せさせたが、口にするのは我慢した。


「……本当だ。お前らの目的に、出来る限りの協力をしてやる。あくまで、出来る限りの、だがな。だから、さっさとお前らの【本当の目的】を話せ」


 ついでにその目的が達せられたらとっとと俺の目の前から消えろ――という台詞が喉までせり上がってきたが、無理矢理呑み込んだ。


「「…………」」


 輝く幾何学模様が眩しい二人は、互いに顔を見合わせた。かつてないまでに驚いているのか、無表情が常だった【宇宙人モード】のキララでさえ、目を大きく見開き、唇をポカンと開けている。


 向き合うことで各々の状態に気付いて冷静になったのか、光る模様が消え、通常モードに戻る。すると、急に妙なやりとりを始めた。


「い、イシュタルさんが言いなよ」


「な、なんですの? あなた先程あたくしのことを邪魔者扱いしていたではありませんの。キララさんが言いなさいな」


「ず、ずるいよ! ここまでボクの邪魔したんだからここはイシュタルさんが――!」


「ちょ、ちょっとお待ちなさい! そんな自分にだけ都合のいいように――!」


「それイシュタルさんのことじゃん! いつも良いところだけかっさろうとしちゃってさぁ!」


「なんですってぇ!? 聞き捨てなりませんわね! そういうあなたこそ――!」


 夏緒が、ふー、と重い溜息を吐いた。


「「――ッ!?」」


 ビクンッ、と二人の口喧嘩が止まる。


「「…………」」


 恐る恐る振り返ったキララとイシュタルを、夏緒は無言の圧力を以て見つめ返す。


「「――――。」」


 煌めく蒼の瞳とギラつく深紅の目がアイコンタクトを取り合い、最終的にタイミングを揃えることに落ち着いたようだ。


 うん、と頷き合って、二人は夏緒に向き直った。その表情は真剣の一言に尽きた。


「実はね、夏緒さん……」


「非常に言い難いことなのですけれど……」


 そして、二つの可憐な唇から飛び出た言葉は、夏緒の想像以上の破壊力を持っていた。




「「――人類滅亡の危機なの」ですわ」




 もう許してくれ。俺が何をしたんだ。


 そう叫びたい夏緒だった。




 

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