ゲーム世界に転生して早々にシナリオ無視する無法者
早朝。
王道学園ファンタジーゲーム【ファンタジーワールド・ヒストリー】の世界。
学園のすぐ近く、真裏に位置する野山。
森林に恵まれ、野生動物も多く生息する自然豊かな緑の山で、山頂からは住宅街を一望できる。
「はいやぁ!! たぁ、とぉっ!」
戦斧を振るい、モンスター狩りに勤しむ男が一人。
彼の名はフロント。昨日この世界に集団転生した転生者の一人である。
前世ではアラフォーのブラック寄りのグレー企業に勤めていたお人好しでダメな大人オタク。
大人びた性格であるが、少年らしい面も残っている。良くも悪くも子供っぽい大人。
前世ではお人好しな性格に付け込まれ、周囲から「都合のいい人」と軽んじられて体よく使われていた。
もっとも、これは彼が凛々しく大柄な容姿がたのもし見えて頼られたというのもある。
おまけに職場も中途半端にホワイトなものだからかえって質が悪く、
本人も少なからず貧乏くじを引いてると感じてはいるも。だからといってどうにかすることもできず。
自分を安売りしてしまい、「正直者が馬鹿を見る」という言葉を具現化した人生を送り、つまらないことで命を落とす。
しかし、彼は異世界転生という機会を手に入れた。
そんな彼は、今生では最高にハッピーな人生を送ってみせると息巻いている。
「転生ボーナスでステータスを高めにしてもらったし、希望の武器の習熟度も最高ランクに設定してある。これならまあ、その辺のザコには負けないだろ」
学園から少しばかり遠出して、発見したモンスターを次々と狩り、経験値を稼ぐ。
「これ、やっちゃっていいのか? ゲームの進行に影響が出る可能性もあるよな……?」
通常であればゲームが始まる前の時期にこのような行動ではできない。
にもかかわらずこのようなことをするのはロケットスタートを決めるため。
なにせ多忙な日々を過ごしていたせいか、ゲームの知識も他の転生者に比べると一歩劣っている。
その差を埋めるべく、こうして秘密裏にレベリング。
身勝手にチュートリアル期間をガン無視して、他の奴らを出し抜こうと考えてる。
当然そんな勝手なことをしてたのが他の転生者にバレれば、何らかのペナルティを負うだろう。
だが、「バレなければ問題ない」っと、どこまでも自分本位。
どう考えても正規の手段ではないのだが……と考えたところで――
「別にこのくらい大丈夫だろ! 賢いぼくちゃんが見つけた裏技。できる男は仕事が早い」
――裏技でゲーム側の穴を突いて攻略しているだけで、悪いことは何もしていない。
自分の都合のいいように解釈。
他の転生者を引き離すのに手段は問わない。
自分は主人公。だから、好き勝手に楽しんで何が悪いのか? それが当然のことだという。
今後、彼が物語や人々の運命を引っかき回していくことが予想される。
「おっ! レベルアップ♪」
システムメッセージめいたレベルアップ通知がの頭の中に浮かぶ。
身に見えてわかる成長にやりがいを感じるていた。
「理想の主人公として自由にキャラメイクさせた上で作り変えてくれた女神様には感謝感謝なんだな」
天に祈りをささげて自分を転生してくれた女神に感謝する。
過去の教訓から、少しなよっとした顔の小柄な高校生男子にキャラメイク。
ちょっと独特な美的センスだが。本人にとっては理想の美男子なのだ。
はじまったばかりではあったが。彼は人生最高の気分であった。
◇
「経験値稼げたし、レベルも上げられた。素材もそれなり」
正午。
1だったレベルも10までまでレベルアップ。
満足のいく成果に上機嫌。
地道にレベル上げするのを苦とする者は少なくないが。フロントはそれを苦としない。
なぜなら彼はプレイした全てのゲームをレベルを上げまくって圧倒的な力でボスを叩き潰すというプレイスタイルでクリアし続けたゲーマーだ。
不必要なまでにレベルを上げてボスを圧倒することで味わえる達成感を生きがいとしていた。
高速クリアを信条とするゲーマーから見れば何が楽しいのかわからないその遊び方を数あるゲーム全てで実行している。
そして、そのプレイスタイルはこの世界に転生してからも変わらなかった。
子供の頃から作り上げられた人格によるもので、四十年近い人生の中で形成されたその性格は簡単には変えられない。その中身のまま、この世界に転生すれば、前世と似た人生を送る羽目になるでしょう。
もっとも、当の本人はそんなこと毛筋ほども考えてないが。
「ぐふっ、ぐふふふふふふ……!」
感情が昂り、最推しキャラとのイチャラブ生活を妄想。
気持ち悪い笑い声を上げなながら、いやらしく顔を緩ませる。
「腹減った。昼飯食いに戻るか」
朝早くからぶっ通しでレベリングしていたが。
激しく動き回れば腹も減る。そして時間も丁度お昼時。
「学園の食堂にするか。それとも街で喫茶店巡りでもするか……」
昼食をどうしようか悩んでいたそのときである――
「ん?」
どこからともなくシニカルな雰囲気の女児が現れる。




