第6話 抑えきれない欲望
(だ、駄目だ……! このまま欲望に身を委ねてしまえば――取り返しのつかないことになる……!)
彼はようやく、自分がいま何をしているのか、その異様さに気づき始めていた。
(も、もし……このまま、妹の手をペロペロしてしまったら……俺は変態になってしまう!)
胸の奥で、警鐘がけたたましく鳴り響く。
(た、耐えろ……耐えるんだ、俺……!)
理性は必死に叫ぶ。
ただ手を放し、この部屋を出ていけば、それで済むはずのことだった。
――それだけの、はずなのに。
(し、しかし……! この温もりは……なんだ……!?)
指先に伝わる、柔らかなぬくもり。それはあまりにも穏やかで、あまりにも抗いがたく、じわじわと彼の理性を侵食していく。
(やめろ……やめてくれ! 俺の理性を……これ以上、壊すな!)
彼は見えない何かと、必死に戦っていた。それが己の内側から湧き上がるものであることなど、半ば理解しながらも。
だが――その均衡も、長くは続かなかった。
限界が、静かに、しかし確実に近づいてくる。
「うおおおおおおおおおおおッ!! お、俺はあああああああ! 妹の手をペロペロしてえええええええ!!!」
ついに堪えきれず、内に秘めていた衝動が声となって溢れ出す。
その瞬間、部屋の静寂は完全に破られた。
――そして。
「お兄……ちゃん?」
「あっ……」
かすかな声とともに、二人の視線が交わる。
どうやら彼の絶叫が、眠りについていた妹を現実へと引き戻してしまったらしい。
逃げ場のない沈黙が、二人のあいだに重く落ちた。




