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第5話 新たな感情の芽生え
(――さて、と。俺たちの幸せを掴むために……まずは一歩だ。ま、まずは……い、妹の手を……そっと、握ってみるか……)
彼は息を潜め、眠りに落ちている妹を起こさぬよう、慎重に両手を伸ばした。指先が触れた瞬間、壊れ物を扱うかのように、そっとその手を包み込む。
(はぁ……はぁ……。お、俺は今……妹の手を……握ってる……)
ただそれだけのことのはずなのに、胸の奥で何かが激しく脈打っていた。静寂の中、自分の鼓動だけがやけに大きく響く。
(な、なんだこれ……。ただ手を握っただけなのに……妙に落ち着かない……)
その温もりは柔らかく、どこか現実味を帯びていて――同時に、彼の中にこれまで知らなかった感情を静かに呼び覚ましていた。
(こ、これは……まずい気がする……。まさか……俺に……こんな一面が……?)
芽生えた違和感は、次第に形を持ちはじめる。
(俺は……この手を……もっと感じていたい……)
理性の奥で何かが揺らぎ、抑えきれない衝動の火種が、じわじわと広がっていく。
(だめだ……考えるな……けど――)
その思いはやがて、止めどなく膨れ上がり、心の内側を熱く染め上げていった。
静かな夜の中、彼の中で何かが確かに変わり始めていた。




