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第36話 夏場で学ラン?

「そうそう――あんたら、爺に用があるんだろ?」


 隼斗は、気安い口調で言った。


「はい。重久様には、どうしても直接お訊きしたいことがありますので」


 揚羽が一歩前に出て、丁寧に応じる。その声音には、わずかな緊張が滲んでいた。


「爺なら道場で待ってるらしい。俺が案内するよ」


「そうか。それは助かる」


 短いやり取りを終え、隼斗は二人を先導して母屋の脇を抜け、道場へと足を向けた。


 真夏の陽射しは容赦なく、地面から立ち上る熱気が肌にまとわりつく。数歩進んだだけで、じわりと汗が滲んでくる。


 そんな中、ふと隼斗は歩みを緩め、後ろを歩く龍馬の姿をじっと見つめた。


「あんたさ、なんで学ランなんか着てんの? しかも上着まで。暑くねえのかよ」


 もっともな疑問だった。この炎天下、何もしていなくとも汗が噴き出すほどの気温だ。


 龍馬は小さく肩をすくめ、どこか余裕のある笑みを浮かべた。


「疑問に思うのも無理はない。確かに普通の学生服なら、とても着てはいられないだろうね」


 そう言うと、上着のボタンを上から順に外し、片側だけを開いてみせる。


「だが、これは特別製だ。内側に小型の冷風機がいくつも仕込まれていてね。これのおかげで、こうして平然としていられるというわけさ」


 覗き込めば、確かに内側には精巧な機器がいくつも取り付けられている。微かに風が流れる気配すら感じられた。


「へえ……そりゃすげえな。服の中にそんなもん仕込むなんてよ。やっぱお前ん家、相当な金持ちなんだな」


 隼斗は感心したように口笛を吹く。


「では今度はこちらから質問してもいいかな?」


 龍馬は上着のボタンを留め直しながら、穏やかに問い返した。


「おう、いいぜ。何でも聞けよ」


 隼斗は気軽に応じる。


「君は――」


「っと、悪いな」


 だが、龍馬が言葉を続けようとしたその瞬間、隼斗は前方を指さして声を遮った。


「道場に着いちまった。話はまた後でな」


 そう言い残し、彼は迷いなく戸に手をかける。


 ぎしり、と木の軋む音を立てて、道場の扉がゆっくりと開かれた。


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