表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/39

第32話 天道重久の家

 天道重久の家は、どこか古びた旅館を思わせる二階建ての母屋を中心に構えていた。


 隣には広々とした道場が併設されており、さらにそれらすべてを覆い隠すように、高い塀が四方をぐるりと囲んでいる。その佇まいは、外界と一線を画すかのような静けさと威圧感を漂わせていた。


 天道隼斗は、開け放たれたままの門をくぐり、迷いのない足取りで敷地へと足を踏み入れる。


 母屋の玄関前に立つと、インターホンを一度だけ鳴らした。


 わずかな間を置いて――


「はい、どちら様ですか?」


 柔らかな女性の声が、スピーカー越しに響いてくる。


「婆ちゃん、オレオレ」


 気軽な調子でそう返すと、


「オレオレ? もしかして、オレオレ詐欺の人ですか?」


 間髪入れずに返ってきた言葉に、隼斗は眉をひそめた。


「そんな訳あるか! どこの世界に自分からオレオレ詐欺って名乗る奴がいるんだよ!」


 思わず声を張り上げて突っ込む。


 すると、くすりと笑う気配がして、


「冗談よ、隼斗。そんなに怒らないで」


 そう言い残し、ほどなくして玄関の扉が開いた。


 姿を現したのは、隼斗の祖母――天道ひよ子。穏やかな笑みを浮かべながら、どこか楽しげにこちらを見ている。


「怒ってはいないよ。いつものことだし」


 対する隼斗は、呆れたように肩をすくめた。


「ふふふ。さすがは隼斗、よく分かってる」


「婆ちゃんと長く付き合ってりゃ、嫌でもな」


 軽口を交わしながら、隼斗は靴を脱いで母屋の中へと上がり、そのまま居間へと向かう。


 一方、ひよ子は一度台所へと足を運び、手慣れた様子で湯のみを二つ用意し、湯気の立つお茶を注いだ。さらに季節の和菓子を添えて盆に載せると、それを両手で持ち、ゆっくりと居間へと向かっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ