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第30話 隼斗の空腹
隼斗は麗奈の部屋を出ると、自室へ戻り、力を抜くようにベッドへ身を投げ出した。
「飯、どうすっかな……。自分で作るなんて、ありえねえし」
ぽつりと漏らした独り言が、静かな部屋に溶けていく。
眠っている麗奈を起こせば、この問題はすぐに片がつく。だが――腹が減ったというだけの理由で、無理やり彼女を起こすのは、さすがに気が引けた。
隼斗は天井をぼんやりと見つめながら、別の手段を探る。
どうすれば、麗奈を起こさずにこの空腹を満たせるのか。
「このまま家にいても、飯にはありつけねえな……。となると外か。でも、手持ちは……三〇円」
自嘲気味に呟き、軽くため息をつく。
やがて諦めたように上体を起こすと、気だるげな動きで私服へと着替えた。
「こうなりゃ、爺のとこ行って、婆ちゃんに何か作ってもらうしかねえか」
結論はあっけないほど単純だった。
そう呟くと、隼斗は部屋を後にし、静かな廊下へと足を踏み出した。




