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第3話 小心者

(このまま、うだうだ考えていても埒が明かねえ……。ここは、男らしく腹を括るしかない!)


 ようやく決意が固まったのか、彼の瞳にかすかな光が宿る。


「よし……まずは」


 かすれた小声が、静まり返った部屋に溶ける。


 彼はそろそろと右手を持ち上げ、人差し指を一本、まっすぐに突き出した。そのまま腕を前へと伸ばし、目の前の妹へと近づけていく。


 指先はわずかに震えていた。


 やがて、恐る恐るといった様子で、その人差し指が妹の頬に触れる。ほんの軽く、確かめるように――つつく。


「はぁ……はぁ……はぁ……。い、妹が起きて……こ、こないってことは……。な、なんとか……だ、大丈夫……みたいだな……」


 どうやら彼なりに、妹が本当に眠っているのか確かめたかったらしい。


 しかし、あれほど思い悩んだ末に取った行動が、ただ頬をつつくだけとは――この兄の小心ぶりには、思わず呆れを禁じ得ない。


(よし……ちゃんと眠ってるのは分かった。なら――ここからは、俺の好きにやらせてもらうぜ!)


 つい先ほどまで不安と恐怖に縛られていた男と、同一人物とは思えないほどに。


 今の彼は、不思議なほどの高揚感に満ちていた。


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