第28話 麗奈のヒーロー
最後の一人が地に伏したあと、天道隼斗はゆっくりと息を吐き、踵を返した。
向かう先には、麗奈の姿がある。
麗奈は地面に座り込んだままの少女を支え、その肩を優しく抱くようにして寄り添っていた。少女の瞳には、まだ恐怖の名残が滲み、今にも零れ落ちそうな涙が揺れている。
隼斗は少女の前にしゃがみ込み、できるだけ穏やかな声で語りかけた。
「大丈夫か? 立てる?」
少女は小さく首を横に振る。
怪我は見当たらない。だが、緊張が解けた反動か、足に力が入らないのだろう。
「そっか……。なら、俺が送っていくよ。背中、貸すから」
「め、迷惑をかけて……ごめんなさい……」
震える声で絞り出すように謝る少女に、隼斗はふっと柔らかく笑った。
「気にしなくていいって。ほら、遠慮すんな」
そう言って背を向け、しゃがみ込む。
麗奈はそっと少女の体を支えながら、その背へと導いた。少女はおそるおそる隼斗にしがみつく。
「よっと……」
軽く重みを受け止めると、隼斗はゆっくりと立ち上がった。
「じゃ、帰ろうか」
その言葉とともに、彼は麗奈へ手を差し出す。
「うん」
麗奈は小さく頷き、微笑みながらその手を取った。
温かな手の感触に、先ほどまでの恐怖が少しずつほどけていく。
こうして三人は、静けさを取り戻した公園を後にした。
夜風はひんやりとしていたが、不思議と、その道のりはどこか温もりに満ちていた。




