第24話 麗奈の心の叫び
リーダー格らしき少年が、一歩、また一歩と、じわりと間合いを詰めてくる。その足取りは妙にゆっくりで、逃げ場を奪うように確実だった。
やがて麗奈のすぐ傍まで来ると、彼は値踏みするような視線で彼女を見下ろし、そのまま円を描くように周囲を回った。
「な、何よ……?」
思わず漏れた声は、自分でも驚くほどか細い。
「へえ……。よく見りゃ、なかなか可愛いじゃねえか」
軽薄な声とともに、少年の右手が麗奈の頬に触れた。
氷のように冷たいその感触が肌を這い、背筋にぞわりとした震えが走る。無意識に体が強張った。
「動くんじゃねえぞ? 少しでも動いたら……」
「……分かってるわよ」
絞り出した言葉に、少年は喉を鳴らして笑う。
「物分かりがいい子は嫌いじゃねえ。ヒャッヒャッヒャ……」
その手は頬から首筋へ、肩へ、腕へと、ゆっくりと、確かめるように滑り落ちていく。
触れられるたびに、言いようのない不快感が胸の奥に広がっていく。逃げたいのに、逃げられない――その現実が、じわじわと麗奈を追い詰めていた。
やがて少年は両腕を掴み、逃げ場を完全に塞ぐと、耳元へ顔を寄せて低く囁く。
「これからお前にも、“最高のキス”ってやつを教えてやるよ」
湿った息がかかる。次の瞬間、頬に生暖かい感触が走り、麗奈の意識が一瞬白く飛んだ。
「ああ……いいねえ。その顔。焦りと恐怖と絶望……全部混ざってやがる。最高だ。ゾクゾクするぜ」
(どうすればいいの……? 分からない……)
思考はまとまらず、ただ恐怖だけが膨れ上がる。
(誰か……教えて……助けて……)
胸の奥で、縋るように名が浮かぶ。
(助けて……お兄ちゃん!)
届くはずのない願いだと分かっていても、それでも麗奈は、心の中で必死に叫び続けていた。




