第23話 最悪な状況
ざわり、と木々の奥が揺れた。
次の瞬間、影が一つ、また一つと姿を現す。だらしなく制服を着崩し、粗暴な気配を隠そうともしない少年たちが、ぞろぞろと歩み出てきた。
その数――七。
空気が、一気に重く沈む。
突然現れた七人は、地面に座り込んで泣き続ける少女の周囲を取り囲んだ。逃げ場は、完全に塞がれる。
「ちょっと! その子に何をするつもりなの!?」
麗奈の声が鋭く響く。
「ああん?」
先ほどの少年が、気だるげに肩をすくめた。
「別に何もしやしねえさ。お前が、そこでじっとしていればな?」
にやり、と口元が歪む。
「まあ……。もし、少しでも変な動きを見せたら……」
顎で少女の方を示す。
「そこの女の顔面は、蹴りでぐちゃぐちゃになるけどな」
下卑た笑いが広がる。
「ヒャッヒャッヒャッ!」
(何てやつなの!)
胸の奥が、かっと熱くなる。先ほど戦った少年――明らかにこの場の中心にいるその男への怒りが、さらに膨れ上がった。
だが同時に、冷たい現実が麗奈の思考を締め付ける。
――最悪の状況。
(私が今動いたら……あの子が危ない)
視線の先で、少女は震えながら小さく嗚咽を漏らしている。
(でも、このまま何もしなければ……何も変わらない)
拳を、ぎゅっと握りしめる。
(どうすればいいの……?)
思考が巡る。だが答えは出ない。
(私は……どうしたらいいの?)
喉の奥が詰まりそうになる。
(誰か……教えて!)
麗奈は唇を強く噛み締めた。血の味が、かすかに広がる。
それでも、視線だけは決して逸らさなかった。




