第20話 麗奈の自信
「その女の子から離れなさい!」
鋭く空気を裂く声が、路地裏に響いた。麗奈は一歩も引かず、まっすぐに少年を睨み据える。その小さな身体からは想像もできないほど、強い意志が宿っていた。
「あぁ? さっきからお前、うるせえなあ」
振り返った少年は、面倒くさそうに肩をすくめる。
「この女は、お前の知り合いか何かなのかよ?」
「違うわ」
即答だった。だが、麗奈の視線は揺らがない。
「でも、その子は泣いてる……あなたのせいで。助けを求めてるの!」
震える少女の嗚咽が、かすかに背後から聞こえる。それが、麗奈の言葉に確かな重みを与えていた。
「ああ、なるほどな」
少年の口元が歪む。
「つまりお前、自分がヒーロー様だとでも思ってんのか?」
「そうよ」
麗奈は一歩踏み出した。靴音が乾いた地面に響く。
「私が、その子を助ける」
一瞬の沈黙。
次の瞬間、少年は腹を抱えて笑い出した。
「ギャハハハハハハハハハッ!」
嘲るような笑い声が、狭い路地に反響する。
「お前さぁ、どう見ても小学生だよな?」
見下ろす視線には、露骨な侮りが込められていた。
「それに比べて俺は高校生。……分かるか? この意味」
「それがどうしたって言うの?」
だが、麗奈は一切怯まない。むしろ、その瞳はさらに強く光を帯びる。
「そんなことで、私に勝てるとでも思ってるの?」
体格差は歴然だった。男と女という違いだけでも埋めがたい溝がある。その上で高校生と小学生――普通なら、勝負にすらならない。
それでも。
麗奈の足は止まらなかった。
その小さな背中には、不思議なほどの確信が宿っていた。まるで――負ける未来など、最初から存在しないかのように。




