第19話 嘲笑う少年
「ちょっと待ちなさい! こんな場所で、何をしているの!?」
鋭く張りつめた声が、空気を切り裂いた。麗奈は一歩踏み出し、少年を睨みつける。
その視線を受けて、少年は気だるげに顔を上げた。ゆっくりと、値踏みするように麗奈を見返す。
「……は? 何だよ、お前」
吐き捨てるような声だった。
「あなたこそ何をしているの!? その子……どうして泣いているのよ!」
麗奈の言葉に、少年の口元が歪む。
「ああ? 何で泣いてるか、だって?」
次の瞬間、にやりと下卑た笑みを浮かべた。
「決まってんだろ。今から俺が――無理やりキスしてやるからだよ」
空気が凍りつく。
「……それは、聞き捨てならないわね。たとえあなたの彼女だとしても――」
「ギャハハハハッ!!」
言葉を遮るように、少年は腹を抱えて笑い出した。その笑い声はやけに大きく、耳障りに響く。
「バカじゃねえのか、お前! 彼女? 冗談だろ!」
嘲るように肩を揺らしながら、少年は続ける。
「こんな奴、知らねえよ。さっき会ったばっかだ」
「……何ですって?」
麗奈の目が見開かれる。
「俺はな――可愛い女とキスするのが趣味なんだよ」
少年は一歩、怯える少女へとにじり寄った。
「だからさ、可愛けりゃ誰でもいいってわけ。ヒャハハッ!」
(な、何て……最低な……!)
胸の奥が、ぐつぐつと煮え立つ。
(見ず知らずの子に、無理やりキスですって? 正気じゃない!)
怒りが、はっきりと形を持つ。
麗奈はゆっくりと拳を握りしめた。
指先に力がこもり、白くなるほどに――。




