エピローグ
時の流れは早いものね。
いつまでも続くと思っていた暮らしは一変し、今で穏やかな日々を送っている。
あの欲と活力にあふれた街は私の手から離れ、ハオルが当主として管理している。
一方で私はというと、
「母様~!アネモネが泣いてますよ?」
二人の子どもの母として日々を生きている。
長男のユリシスに長女のアネモネ。
6歳と1歳の可愛らしい子どもたち。
ユリシスは私に似て黒髪を受け継ぎ、アネモネはセイクに似て金髪。
どちらも私の宝物だわ。
コンコン。
そんな私の一室に訪れる者があった。
「どうぞ」
「ライラ!おはよう!それにユリシスとアネモネも元気かな!?」
「そんなに大きな声を出さないでくれる?アネモネが驚くでしょう?」
「いやぁ!すまない!つい大きな声が出てしまってな!」
「父様、お静かに」
「ははは!ユリシスは今日も大人しいな!もっと子どもらしく甘えてくれていいんだぞ!」
ぎゅっと抱きしめると彼はユリシスを高く持ち上げる。
「やめてください!僕はもう小さい子どもではありませんので!」
「ははは!そうかそうか!」
息子の言葉はまったく響いていないようだ。
「はぁ……貴方も王になったのだから少しは落ち着いたら?」
「もちろん家臣の前では落ち着いている。だが、家族の前でははしゃいでも構わんだろう?」
「限度というものがあるわ」
私は泣くアネモネを抱きながらセイクを叱る。
「そうは言うが、仕方ないじゃないか。とても幸せなのだから」
昔と変わらぬ笑顔を見せたセイクを見て、私はつい絆されてしまう。
「ははは、君がそうやって笑ってくれる。そして私の傍にいてくれて、子も産んでくれた。これ以上ない幸せだ」
「もう……子どもたちの前よ?あまりそういうことは言わないでほしいわ」
「そうだな。二人きりの時にもう一度伝えるとしようか」
朝から元気な人。
「はいはい。今日もしっかりと働きなさいな。この民たちが笑って暮らせるように」
「もちろんだとも!」
忌み嫌われた令嬢は、多くの民から愛される国母となったのだった。
「姉様に会いたい!」
「なりません。弟とはいえもはや軽々しくお会いできる相手ではありませんよ」
「ならばいつ会えるというのだ!」
「そうですね。ハオル様が結婚でもなさればパーティーに参加されるのではないでしょうか?」
「……それ以外は!?」
「さっさと身を固めなさい。このシスコン」
「貴様!執事の分際で当主にシスコンだと言ったな!」
「事実を言って何が悪いのですかな?」
「僕は、僕はシスコンじゃない!姉様を愛しているだけだ!」
「それをシスコンというのです」
一方でレミゼラルムーン邸では、ハオルとゼオンの毎日の争いが繰り広げられているのであった。




