母とも呼べる方への相談
私は夕方、孤児院の前にいた。
そこである人が来るのを待っているの。
「あら?ライラお嬢様?お一人ですか?」
ハオルはもちろん子どもたちも傍にいない状況に、リアット君を連れたサリーナさんは不思議そうに首を傾げた。
「えっと……少し相談がございまして……」
「お店ではできないことですか?」
「ええ、ちょっとプライベートのことでして……」
「僕、先に行ってるね?」
「わかったわ。いってらっしゃい」
幼いながらも何かを察したリアット君は、門をくぐって敷地内へと入っていった。
「それで?どういったご相談かしら?」
「あ、あのですね……」
「ずいぶんと口ごもりますね?珍しい」
「すいません……お時間もあるというのに……」
「そこは気にしなくて構いません。ライラお嬢様と同伴していたと報告しますので」
にっこりと微笑むサリーナさんのおかげでずいぶんと心の重しが軽くなった。
「実は……結婚を申し込まれていまして……」
「あら、おめでたいことですが、お悩み中という感じでしょうか?」
「そうなのです。それも三人から……」
「うふふ、私は少ないくらいだと思いますけどね」
「冗談ではないですよ……どの方も素晴らしい人で、誰を選んでも幸せになれる予感はあるんです」
「良い人に見初められたのですね」
「はい、そう思います」
「それでは三人の誰にしようかという相談ですか?」
「いえ、そうではなくてですね。結婚って何なのですか?」
「そうですね……難しい質問です。ですが……」
私の質問にサリーナさんは真っ直ぐに私を見つめて返してくれた。
「この人を誰にも渡したくないという二人の愛が、結婚という言葉で結びつけるのではないでしょうか?」
「誰にも渡したくない……」
「そうですね。その御三方に他の女性が隣にいて許せない人がいらっしゃいますか?」
私は想像をする。
セイクリッド様、サクリッド様、シェルド。
三人の傍らにリア嬢がいると想像してみる。
「おほほほ!彼は私のものですわ!」
その想像の中で、彼女と並んでいることが不愉快に思った人がいた。
「います」
「それが愛というものですね。その愛を周囲に知らしめることが結婚です」
「ありがとうございます。おかげさまで自分の気持ちに素直になれそうです」
「お役に立てれば光栄です」
「それでは一緒にお店に行きますか?」
「いえいえ、お気になさらずに。少し用を足してまいりますので」
「そうですか。それでは本日はありがとうございます!」
「どういたしまして」
サリーナさんは手を振りながら、私を見送ってくれた。
やはり相談にきて良かったと、そう思う私なのだった。
「ママ、ライラック様結婚しちゃうの……?」
門の影からそっと出てきたリアットは、母に声をかける。
「そうね。きっとそうなのでしょう」
「そっか……」
母の答えにリアットの瞳から涙が溢れていく。
「初恋だったものね」
サリーナはリアットの身体を優しく包んであげた。
「うん……大好きだった……」
「その胸の痛み、大事にしなさいね。あなたが強く、そして優しくなるために必要だから」
「うん……」
母の言葉とライラックへの想いを胸の奥底で大切にし、成長したリアットは、サリーナ譲りの美貌に加えて文武両道でありながらも驕らず、誰にも優しく接するということで数多の女性を魅了することになるのだが、それはもう少し未来の話。




