厄介なお知らせ
「ふぁぁぁ……」
お風呂に入ってからすぐにベッドで眠り、目覚めると時計は三時を示していた。
さてと、寝間着から着替えるとしましょう
私は普段着である花柄のワンピースに着替えると、洗面所へと向かう。
すると、衣服が入った木の洗濯籠を持ったアイリスと廊下で出会った。
「あっ、お嬢様!おはようございます!」
「おはよう、アイリス。顔を洗ったら食事にしたいからコックに準備するように言ってくれる?」
「かしこまりました!」
アイリスは私の言いつけに素直に頷くと、足早に去っていく。そんな彼女の背中を見送りながら歩いているとふと思い出した。
そう言えば昨日グリオン男爵の不正を告発したから、そろそろ捕まっている頃ね。
真面目にやっていればそれなりの位置にいれたのに、なぜ人は欲張ってしまうのかしら?
まあ、それが欲望というものであり私たちの家が存在する理由なのでしょう。
さて、今日もお仕事頑張りますか。
私はぐっと腕を空に伸ばすと、洗面所へと向かうのだった。
洗面所に着くと、先客が顔を洗っていた。
タオルで顔を拭っているけど、あの髪と服装はハオルね。
白いシャツにブラウンのズボン。
シンプルな私服なこと。
「あっ姉様、おはようございます」
「おはようハオル。貴方も今起きたところ?」
「はい。……姉様もみたいですね?」
「あまり寝起きの顔を見ないでちょうだい。恥ずかしいわ」
「姉様はどんなときでも綺麗ですから。大丈夫です」
にっこりと微笑み、そんなことを言われると私も照れてしまう。
「そういったことはお付き合いしている娘に言ってあげなさい」
「そんな人はいません」
「そう?ハオルは令嬢からの視線も熱いし、女優や歌姫たちからも人気でしょうに」
「僕は姉様がいればそれでいいので」
うーん……そんなにいい笑顔で言われても困るのだけど……
「ありがとう、ハオル」
それでも姉としては嬉しいものね。
なので、私は手を伸ばして頭を撫でてあげた。
ハオルもずいぶんと大きくなり、今では私と同じ身長くらい。
「姉様……」
いつまでも可愛い弟だと思っていたのに、すっかりと男の子になって。
だけど、照れくさそうに笑うハオルはまだまだ可愛い弟ね。
私はそんなハオルを見て、笑みがこぼれる。
「それじゃ私も顔を洗うわ。終わったら食事にするつもりだけど、ハオルは?」
「僕も食事にするつもりです」
「じゃあ一緒に食べましょうか。先に食堂で待っていて」
「はい!」
ハオルは嬉しそうに頷いた後、洗面所から出ていく。
さて、私もさっさと洗ってしまいましょう。
そう思った私は蛇口へと手を伸ばしていった。
ふぅ……すっきりしたわ……
さっぱりとして気持ちいい気分で廊下歩き、食堂へと向かう。
「あっ姉様!」
「おはようございますお嬢様」
「準備できてますよ!」
そこには自分の席に座っているハオルとその傍らに立つゼオン。
それに丸パンが載ったお皿を運んでいるアイリスの姿があった。
「お待たせハオル。それからおはようゼオン。ありがとうアイリス」
私はゼオンが引いてくれているハオルの隣の椅子の上に腰を下ろすと、厨房の方からの良い匂いに気づく。
どうやらビーフシチューみたいね。
ふふっ、嬉しい。
そしてすぐにアイリスがシチューの入ったお皿を台車で運んでくる。
「おかわりはいっぱいありますから!お嬢様もハオルシア様もたくさん召し上がってください!」
「ええ、もちろん」
「いただきます」
私とハオルは両手を合わせると、ビーフシチューにスプーンをつけた。
そしてそれを口に運ぶと、奥深い味わいが口内に広がっていく。
うん、美味しい。
そうして食事を楽しんでいると、
「お食事中失礼いたします。来客の方が現れました」
使用人がやってきた。
「お嬢様、私が対応して参りますので」
「ええ、よろしく」
ゼオンにことを託した私は思う。
どうか私が出ることがないように。
せっかくの食事を楽しみたいからね。
だけどそう思ったときほど厄介なことがやってくるものだ。
「お嬢様、第一騎士団のシェルド様がお見えになられています」
「はぁ……応接室に通しておいて」
「かしこまりました」
清廉潔白な騎士様のご登場ね……
また嫌味でもいいに来たのかしら……
先ほどまで美味しかったビーフシチューの味が霞んでしまうのだった。




