今度はホストクラブを視察よ
女性が接客をするクラブがあれば、男性が接客をするクラブもある。
今日は以前行ったヴィーナスとは真反対に当たる場所へと視察に行くことにした。
───夜の色街───
ヴィーナスに比べれば奥まった場所にあり、店の外観もそう派手ではなく、レストランのような装いをしているのが今回訪れるクラブ[オーディン]だ。
既婚未婚問わず、女性がこういった店に通うことはあまり良くは思わないという価値観がある。
それでも多くの淑女たちが訪れるこの店はナディアスで一番のホストクラブというもの。
「はぁ……気が乗らないわね……」
「姉様?女性ならこういった場所を好むのではないですか?」
「私はあんまりかなぁ。どうせなら女の子の方に接待されたいものね」
「そうですか。ボクも姉様にいやらしい目線を送ってくるので嫌いな場所です」
気が乗らないとはいえ、こういった場所は大きな情報源となる。
だからこそ巡回はしなくてはならない。
ハオルが扉を開き、室内の明かりが漏れ出すと同時に、
「「「ようこそ!オーディンへ!!!」」」
落ち着いた外装とは別次元の内装の豪華さと、多くの男性たちが出迎えてくれた。
「って!ライラック様じゃないですか!」
「ようこそおいでくださいました!」
「オーナー!ライラック様がご来店です!」
「ちょ、ちょっとそんなに大げさにしないで……」
私はキャストたちに落ち着くようにお願いしたが、遅かった。
「ふふふ……ようこそおいでなさいました……」
長いロングの金髪をかき上げ、胸元の大きく開いた白シャツと黒のスーツを着た一人の男がやってきてしまった。
そして私の前でひざまずくと、左手を取ってくる。
「ナイトレディ……」
そのねっとりとした動きに鳥肌が立ちそうである。
「……元気そうね、アダム」
アダムはこの店のオーナー兼キャストであり、No.1の存在だ。
私にはどこがいいのかわからないけど。
「ナイトレディもお元気そうで嬉しく思います」
「いつまで触っている。挨拶が終わったのならさっさと離れろ」
「おやおや……ナイトボーイは相変わらずですね?」
「ナイトボーイとか言うな。ボクはハオルシアだ」
入口から入ってすぐのホールでそんなことをしているものだから、奥に並ぶテーブルからの視線が痛い。
アダム様をあんなに無下に扱うなんて……
さっさと帰りなさいよ。
でもハオルシア君は可愛いわね。
物を言う視線が私の半身を貫いてくるので、困ったものだ。
「アダム。お客様たちがお待ちよ?接客に戻りなさいな」
「はっ……このアダム、ナイトレディの命には逆らえません……申し訳ありませんが、これにて失礼致します……」
長い前髪をかき上げると、アダムはくるりと振り返り客席へと戻っていった。
すると、
「きゃぁ!アダム!こっちに来てぇ!」
「ううん!こっちよぉ!」
「私も待ってるのだけど!?」
凄まじい騒ぎが起こってしまう。
だが、
「申し訳ない……私の身体はたった一つ……順番に回らせて貰うから、少し待ってほしい……」
手で顔を隠しながらそう言うと、
「「「わかったわ!!!」」」
すぐさま落ち着き払っていった。
「相変わらず凄いわね……」
「ええ、オーナーは誰にも平等に接して誰よりも女性たちのことを知っています。名前はもちろんどんな会話をしたかも全て覚えているんですから凄い人ですよ」
近くにいるキャストが私に教えてくれる。
とぼけた様子を見せるけれど、一流の仕事人なのよね。
「ライラック様、どうなされますか?」
「そうね。空いているキャストでいいわ」
「……少し訳ありな者でもよろしいでしょうか?」
「あら、どのような人かしら?」
「王に憧れるピエロといった者ですね」
「……ふぅん?なら、笑ってやっていいのね?」
「ええ、存分に」
「任せてちょうだい。その代わり、お酒はタダだからね?」
「ええ、もちろんです」
そんな会話の後、私とハオルはテーブルへと案内される。
そしてやってきたキャストは……
「よう。お前がライラックだって?」
軽々しく私の席の隣に座り、アダムを真似したのか長い茶髪をかき上げ、胸元を開いた男。
要するに勘違いしたバカだった。




