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忌み嫌われる夜の令嬢ですが国家の中枢を担っています  作者: think


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楽しみにしていたシェルドの訪問

「お嬢様、シェルド様が来られました」


「わかったわ、応接室に通してちょうだい」


執務室にて書類作業を片付けていた時のこと、ゼオンが来客を告げにやってきた。

シェルドの訪問を知っていた今日の私は、少々気合を入れてドレスアップしている。

黒一色ではなく、白のラインを刺繍として織り込んだドレスに、少し空いた胸元にはサファイアのネックレスで彩りを。


少し気合いを入れ過ぎたかしら?


そんなことを思いながら応接室の扉を開ける。


「待たせたわね」


「失礼いたしておりますレミゼラルムーン伯爵、そのようなことはありません」


いつも通りの空の色のような青い髪に銀縁メガネ。

メガネの下の瞳は真っ直ぐに私を見つめてくるので、少し照れる。


「どうぞ。座ってちょうだい」


私は対面に座ると、シェルドに指示をする。


「ありがとうございます」


それに応え、彼も座った。


「異国連合の内紛が終わったおかげで目立った犯罪行為は影を潜めました。新たな騒動の種が育たないように巡回を強めておりますが、騎士団ということで反発をされてしまう場面みあります」


「そういった場所は私たちの警士隊に任せてほしいわ。ぶっきらぼうに見えてしっかりと仕事をやってくれる人たちよ」


「かしこまりました。では巡回の持ち場ですが」


シェルドはテーブルにナディアスの地図を広げる。


「異国連合の色が強い西地区は警士隊にお任せ致します。我々は東地区と中央区の一部を担当するということでよろしいでしょうか?」


東地区にあるのは民間組織ムーディアル。

どちらかというと王都の民が多い地区なので騎士団が担ってくれるのは助かる。


「ええ、そうしてちょうだい」


「かしこまりました」


今までは騎士団と警士隊の二つの組織が全域を巡回していたけど、こうして半分を任せられることになったのはシェルドが来てくれたおかげだと思っている。

こちらに対し偏見なく、治安を維持する部隊として信頼を置いてくれていることが普通の騎士にはできないことなのだから。


「ありがとう。シェルドが来てくれてからナディアスの治安は良くなる一方だわ」


「私は自分の職務を全うしているのみです。感謝は畏れ多く思います」


「素直に受け取りなさい。あなたでなくてはできなかったことなのだから」


「それでは謹んでお受けいたします」


シェルドは僅かに微笑んだ。

勤務中に微笑む姿など見たことがなく、私もまた笑った。


「あなたも仕事中に笑ったりするのね?」


「……笑っておりましたか?」


「ええ、ほんの僅かだけどね」


「これは失礼致しました……」


シェルドはメガネをクイッと持ち上げると、再び無表情へと戻ってしまった。


「それでは話しの続きですが、現在は十ほどある詰所をもう少し増やせないかと思いまして」


「現状では不便かしら?」


「ええ、新人も増えてきておりますので、もう二箇所ほど増設を希望致します」


「そうね。空き店舗やスペースを探してみるわ。どの辺りをご希望?」


「そうですね。東地区に一箇所、中央区に一箇所といったところでしょうか?」


シェルドが地図を指で示していく。


「わかったわ。場所は探しておくけど、建設費用はそちら持ちよね?」


「そこは何割か補助金がおりませんか?」


「二割でどう?」


「出来れば三割ほど」


「そこまでは持てないわ。あくまで騎士団の施設よ?」


「でしたら間を取り二割五分でどうでしょうか?」


「二割」


「……かしこまりました。二割の補助金よろしくお願い致します」


「ええ、任せておきなさい」


こちらの言い分が通るとスッキリするわね。


それからもこの街の警備に関しての話し合いが続き、ようやく一段落をした頃には時計の針は三時を示していた。

一時から始まったのでおよそ二時間が経過している。


「時間も良い頃合いですね。私はこれで失礼致します」


「ええ、ご苦労さま」


シェルドは温くなった紅茶を一気に飲み干すと、柔和な表情を見せた。


「本日のライラック様は、とても美しく思います。少し目のやりどころに困りましたが……」


「あ、あら、そう?」


「そのような御姿を見せるのは……私だけにしてほしいものですね」


シェルドは照れた様子でにこやかに笑う。

そんな彼の言動に、私も照れてしまった。


「か、考えておくわ……」


「……よろしくお願い致します。それでは私はこれで失礼致します」


シェルドは少し慌てた様子で立ち上がると、扉の方へと急いだ。

途中、絨毯につまずきかけることもありながらも扉を開くと、丁寧に頭を下げて出ていった。


「はぁ……顔が熱いわ……」


褒め言葉なんかいくらでも聞いたことがあるというのに、なぜこうも身体が火照るのかしら?

私にはその理由がわからないまま、天井を見上げるのだった。

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