王と息子の語らい
「今月も終わってしまったな」
「ええ……」
王家とレミゼラルムーン家の秘密会議を終え、ライラックとハオルがこの場を去った後、王とセイクリッドの親子の語らいが始まった。
「やはり、諦めきれんか?」
隣で椅子に座る父の言葉にセイクリッドは深く考えずに頷いた。
「はい……」
「やはりそうか」
「い、いや!私も自分の立場を理解はしております……!」
「この場で隠す必要などない。まったく魔性の女よな。強く、美しく、そして優しい。お前が、いやお前だけではなく他の貴族の若者が惚れるのもわかるというものだ」
「そうなのですか!?」
「なんだ?知らなかったのか?玉座から見ていると、視線がどこに向いているのかはわかる。若者たちの多くはライラを見ているぞ。嫌悪ではなく羨望の眼差しでな」
「むぅ……」
「ライバルは多いな。息子よ」
「……はい」
「それに障害も多い。それでもライラと添い遂げることを願うのか?」
王は真っ直ぐにセイクリッドを見つめ、問いかけた。
「私は、忌み嫌われるレミゼラルムーン家の誤解を解きたいと思います」
「それは今うまくいっているこの国のシステムを変更するというのか?」
「犠牲になっている家門がある上での歪なシステムだと思います。レミゼラルムーン家はこの国の根幹として長年悪名を背負いながらも尽くしてくれています。もう、解放されても良いのではないでしょうか?」
「そこまで言うのならもはや反対はせん。思う通りにやってみるがいい。次の王はお前なのだから」
「父上!」
「だが、覚悟しておくことだ。大雨の最中の濁流に等しいほどの反感が押し寄せてくるだろう。それでもお前は成し遂げられるかな?」
「好きな女性がそんな危険な場所にいるのです。助けに向かうのが、男なのではないですか?」
セイクリッドは王に対し、照れも気負いもなくただただ真摯に話しかけた。
「……ふはははははは!言いよるではないか!」
王はひとしきり笑った後、優しく微笑んだ。
「やってみるがいい。セイクリッド、お前の思うままに」
「ありがとうございます!父上!」
「だが……」
「父上?」
「ライラならぴょんと自分で濁流を飛び越えて助かりそうな気はするな」
「ふふふ……そうですね」
「くしゅん!」
馬車に乗り、王城から帰っていると突然の寒気に襲われた。
また風邪かしら?嫌だわ。
早く帰ってお風呂にゆっくりと浸かることにしましょうか。
私を乗せた馬車は静かな音を立てて、愛する屋敷へと向かっていった。




