ゲレンドの調査結果
「お嬢様、お待たせ致しました」
ゲレンド・アレンディアと出会ってから五日後、ゼオンに命じていた調査の結果が提出された。
陛下との秘密会議の前日のことである。
「どれどれ……」
私は十数枚ほどある書類をじっくりと読み込んでいく。
「なかなかうまくやってるわね」
数多くの不正を行っているけど、大胆というよりも一つの案件で小さく儲けているタイプだ。
建設関係の業者から裏金や接待を受けているが、それほど大きな金額は動いていない。
ただ、小さな利でも数が多くなると大きな利となる。
そうしてゲレンドはそれなりの富を得ているのだ。
建設会社はほどほどの賄賂で大きな利益を得るので、ゲレンドを訴えようとはしない。
損をするのは納税している国民だけという図式ができている。
「どれだけ見せしめをしてもこういったことは無くならないわね」
「汚職に限らず犯罪行為が無くなることはありえませんよ。誰もが自分はうまくやれると思っているのですから」
「ふぅ……人間というのは困った生き物ね」
無くならないからといって諦めてはどうにもならない。
見つけては消していく。
それが私に課せられた生き方なのだ。
「ですが、そんな人間ばかりではありません。そのことはお嬢様も良くご存じでしょう?」
「ふふふ、そうね」
人を喜ばせたい、楽しませたい。
そんな考えの人間も多くいることは事実。
汚点ではなく、美点を見て日々を暮らしていきたいものね。
私はそう思いつつ、書類を封筒へと収めた。
そして翌日の午後。
私は今馬車に乗り、王城へと向かっている。
本日はパーティーなどもないのでとても楽だわ。
今回は税金を納めるという名目で王城に入り、いつものように秘密通路から目的の場所に訪れる手はずね。
「はぁ……なんだか一月があっという間だったわ……」
改めて振り返ってみると、なかなかに波乱に満ちた日々だった。
それでも、
「楽しい一月だったわね」
そう思えるのは嬉しいことの方が多かったからだろう。
それから王城に到着し、会計課で税金を納めた私はレミゼラルムーン家に与えられた一室から地下にある部屋へと向かった。
「良く来たな!ライちゃん!会いたかったぞよぉ!」
封印された扉を開けて中に入るや否や、陛下が飛びついてきた。
「陛下……毎回言っておりますが、抱きつくのはおやめください」
「おおん……ライちゃんが冷たい……ちっちゃな頃はあんなにも喜んでくれたというのに……まあよい。それにしても大変な一カ月であったな。見舞いに行けんですまなかった」
「いいえ。セイ様が来てくださったので大変嬉しく思いました」
「このバカ息子は見舞いに行くと言って聞かなかったのでな」
「父上……その話は忘れてください……」
「いいや、忘れるものか。あれほど必死なお前は見たことがなかったからな」
「まあ……セイ様ったら……」
「いやぁ……参っ……」
「陛下、そろそろ会議をいたしませんか?」
「うむ。そうだな」
なんとはなく照れる気持ちがあったのもつかの間。
私はハオルの言葉にすぐに気持ちを引き締めた。
バチバチ。
隣でセイ様とハオルが睨み合っていることには気づかないまま。
「異国連合の内部が落ち着いたおかげで、前回よりもいろいろな部分が改善されていますね」
「ふむ、ライラのおかげじゃな。少々お転婆が過ぎたようじゃが」
「うふふ、お恥ずかしいですわ」
「あんまり心配をかけさせてくれるなと思った後に、撃たれたと聞いては余の心臓が持たんかと思ったぞ」
「その節はご心配をおかけ致しました」
「ほほほ、ライラが無事でいてくれたらそれでよい。それで?今回はおるのかの?余の国で悪さをする者は」
「残念ながら」
「まったく、次から次へとよく湧き上がってくるものだ。それで?今回は誰じゃ?」
「建築省のゲレンド・アレンディア男爵ですわ」
「ふむ……アレンディア家はドルドではなかったか?」
「その方は祖父ですね。最近代替わりしたようです」
「ふむ……ドルドは真面目な男だったがのぉ……」
「一人息子の忘れ形見なので教育が甘くなってしまったのでしょう」
「残念なことだ」
私が報告書を渡すと、陛下はそれに目を通した。
「これだけの証拠があれば捕らえることは容易いこと。すぐにでも第三騎士団を動かすことにしよう」
「よろしくお願い致します」
その後も国の方策を話し合い、一旦の区切りを迎える。
「今回も良い話し合いができた。これからもライラたちの活躍に期待しておるぞ」
「はっ、光栄の極みでございます」
「そんな方苦しいのはやめじゃ。可愛らしくありがとうございますって言ってくれればいい」
「……ありがとうございます」
「なんだか怒っておらぬか?」
「おほほ、陛下の気の所為ですわ」
いつまで孫扱いされるのかしら?
そろそろ一人前の当主として扱って欲しいのだけれど。
「それでは会議を終了する。ご苦労であった」
「「「はっ」」」
私たちは陛下の号令に頭を下げたのだった。




