おねだり上手な姉、素直な妹
「えぇ?それじゃシャーリーちゃんは初めてこうやって接客するの?」
「はい、今までは研修中でしたのでお姉さんの傍で飲み物を作っていたりしていただけでして。ライラック様が初めてのお客様です」
「うふふ……なんだか嬉しいわね……なんでも頼んじゃっていいからね!」
「ありがとうございます♪それじゃ黒服さん、ロミアコンテルンをお願いします♪」
……この娘、遠慮なくいったわね。
ロミアコンテルン。
金貨二十枚のお値段であり、この店で最高額のワイン。
「シャーリーちゃん……本当に初めて?」
「本当ですよ?何ならオーナーに聞いてみますか?」
この自信満々な笑顔、確実に本当のことなのだろう。
「うふふ、大丈夫よ。シャーリーちゃんが言うのだもの」
「嬉しいです♪ライラック様大好き♪」
ギュッと私の腕に抱きついてくるシャーリーちゃん。
お、恐ろしい娘……
こんなにも簡単に接触を許すなんて……
「こんなことするの、ライラック様だけですからね?」
むふぅ……良い娘じゃないの……
私は単純だった。
盛り上がる私たちの席と比べて、ハオルとシャロンちゃんの方は、
「「……」」
一切盛り上がっていなかった。
シャロンちゃんはなんとか会話を探そうと考えているようだけど、ハオルはまったく無表情のまま座っている。
「ハオル、少しは会話をしなさい。女の子を困らせるなんて姉として恥ずかしいわよ?」
「そうは言いますが……こういった場所は苦手なんですよ」
「パーティーでもそう言ってご令嬢との会話を拒んでいるでしょう?そんなことはもう許されない歳になっているの。いつまでも子どもじゃいられないわよ?」
「うっ……わかりましたよ……」
私の言葉にハオルは渋々といった様子でシャロンちゃんの方を向く。
「ボクはハオルシア。君の名前は?」
そこから?
「シャロンです……」
「本名?」
すぱーん。
私はハオルの頭を叩いた。
「何するんですか?」
「何質問してるのよ?こういった場所でそんな野暮なこと聞くんじゃないの」
いきなりNGな質問をするとは思わなかった。
「あっ、本名です……サリーナさんも本名でやっていると聞いて、私たちもって……」
そんな質問に丁寧に答えてくれるシャロンちゃん。
なんて良い娘なのかしら。
「二人ともサリーナさんに憧れてるんだ?」
「憧れてますよ♪……倒すべき相手として」
「はい……憧れの人です……」
シャーリーちゃんはにっこりと、シャロンちゃんは恥ずかしそうに微笑んだ。
なんとも正反対な双子だこと。
「それじゃあ次の質問だけど、歳は?」
すぱーん。
私は再び弟の頭を叩いた。
「姉様、そう気安く叩かれては困ります」
「困るなら変な質問ばかりするんじゃないわよ」
「歳を聞くことは会話のつかみでしょう?」
「女性には聞かないことは紳士のマナーでしょうが」
「年齢は恥ずべきことではありません」
「気持ちの問題よ」
「え、えっと……十六歳です……」
シャロンちゃんは戸惑いながらもそう答えてくれる。
「あら、ハオルと同じ歳ね。ならもっと仲良くしなさいよ」
「任せてください。なんでこの仕事を始めたの?」
すぱーん!
私は先ほどよりも力強く頭を叩いた。
「姉様……痛いです……」
「なんでそんなに正確に相応しくない質問ばかりするのかしら?このおバカ。ごめんなさいね?シャロンちゃん」
「……ふふっ」
私が頭を下げると、シャロンちゃんは笑った。
「あっ、ごめんなさい……ハオルシア様はとても真っ直ぐな人だなって思って……私たち、王都でレストランをやりたくて来たんです。お金もそれなりに持ってきたんですが、王都って信じられないくらいに物件がお高いんですね……予算オーバーでして、なのでお金を貯めるためにこの仕事をさせてもらっています」
「シャロンったら全部本当のこと話しちゃって」
「あっ……お姉ちゃん、ごめんなさい……」
「いいわよ。そこがシャロンの良いところだもんね」
うーん……美しい姉妹愛ね……
「すいません。ロミアコンテルンを一本ください」
「かしこまりました」
ハオルが近くにいた黒服に注文をする。
「ハオルシア様!?」
「先日、カジノで儲けた不労所得がある。どうしようかと思っていたけど、ここで使ってしまおうと思っただけだ」
あらあら、照れちゃって。
こう見えてハオルってば人が頑張る姿に弱いのよね。
田舎からやってきて困難にぶつかっても夢のために頑張る姉妹に心打たれたんでしょうね。
「あ、ありがとうございます……」
「お礼はいい。夢、叶えるように頑張りなよ」
「はい……!」
ふふっ、意外と好相性な二人なのかもしれないわね。
「ライラック様~♪もう無くなっちゃいました~♪おかわりいいですか~?」
「いいわよん♪」
「きゃぁ♪ありがとうございますぅ♪」
ああん♪シャーリーちゃんってばなんて可愛いのかしら♪
「姉様、顔がゆるゆるですよ?」
「ストレス発散中だからいいの」
「ふふふ、楽しそうですね」
私の気分が最高潮に盛り上がったとき、私たちのテーブルにやってきたのはサリーナさんだった。




