可愛い女の子のおもてなし
カジノの見回りの翌日、私とハオルは色街へとやって来ていた。
この界隈は夜の街ナディアスの中でも一番欲が濃い場所。
男女を問わず、その美貌で客をもてなしている。
私たちがいる入り口付近は、キャバクラやホストクラブといった酒と会話を提供する店が多いが、奥に行くにつれて身体を許す店もあり、そこはきらびやかというよりもポツンと小さな光魔灯が照らしているのみの店が多い。
そういった店は影ホテルと呼ばれ、小さな個室にベッドが置かれている場所で……まあそういうことをするわけ。
意外にも入り口付近よりも奥まった場所の方が犯罪率が低いのは、いろいろと考えさせられるわね。
「さて、今日はヴィーナスから視察しようかしら」
「姉様、ご機嫌ですね」
「綺麗なお姉さんたちにキャーキャー言われるのよ?やる気も出るってものね」
「姉様はときおりおじさんの発言みたいなことを言いますよね」
「そういうハオルは嬉しくないの?可愛がられているじゃない?」
「ボクは別に……」
「はぁ……まだまだお子様ね」
「むっ。ボクはもう子どもじゃないです」
「はいはい」
私は色鮮やかな光魔灯の明かりの下、石畳の道を歩いていく。
そうしてこの辺りでひときわ大きい店構えの場所の前で、立ち止まった。
大きな扉の上部にある看板にはヴィーナスと書かれている。
「いらっしゃいませ、ライラック様。本日は視察でしょうか?」
扉の前で立つ黒服の男が声をかけてきた。
「ええ、席は空いているかしら?」
「はい、空いておりますよ」
「じゃあ二人でよろしくね」
「かしこまりました。お客様ご来店です!」
黒服は扉を開けると、嬢たちが赤い絨毯の上に並ぶ。
「「「ようこそ!ヴィーナスへ!」」」
ここで並ぶ娘は指名が少ない娘たちがほとんどだけど、それでも可愛らしい娘から色気がある娘と魅力ある娘が大勢いる。
「きゃぁ!ライラック様!いらっしゃいませ!」
「ハオル君!可愛い!」
並んでいる女性陣からの熱烈な歓迎を受けて、私たちは細い通路を歩いていく。
「ようこそ。ライラック様、ハオルシア様」
「ええ、繁盛しているようね。オーナー」
「おかげさまでございます」
薄明かりの下の店内ではあるが、あちこちのテーブルから楽しそうな声が聞こえてくる。
そんな中をオーナーの案内を受けて、観葉植物で仕切られたテーブルへと到着し、ソファへと腰掛けた。
ハオルも私の隣に座る。
「本日はどうされますか?」
「サリーナさんは空いている?」
ここはリアット君のママのサリーナさんが働いている場所。
空いていたらいいのだけど。
「申し訳ございません。今は応対中でございます」
あら、残念。
「さすがNo.1ね。一度挨拶をしたかったのだけれど」
「少しのお時間をいただければ、お席に着かせていただきます」
「ありがとう。それじゃいつも通りの娘を呼んでくれる?」
頑張っていても売り上げが低い娘を応援する意味で、私はそういった娘を指名する。
「かしこまりました。でしたら新人が二人入っておりますので、そちらにご案内させていただいてよろしいでしょうか?」
「新人さんか。いいわよ」
「ありがとうございます。それでは少々お待ち下さいませ」
オーナーは深々と頭を下げると、この場から離れていった。
「さてさて、どんな娘が来るのかしら?」
「姉様?ホステスさんには触らないようにしてくださいね?」
「それは男性客への注意でしょう?女の私には関係ないわ」
「男も女も関係ありません」
堅いことを言うハオルを無視し、待つこと数分。
「お待たせしました」
「いらっしゃいませ……」
「「失礼します」」
お待ちかねの女の子がやってくる。
私の隣には長い水色の髪の女の子。
ハオルの隣には同じく水色の髪のショートカットの女の子が着席した。
「もしかして?双子ちゃん?」
「はい、姉のシャーリーです」
「妹のシャロンです……」
シャーリーはにっこりと、シャロンは少々固い笑顔で挨拶をしてくれた。
うーん、どちらも可愛いわね。
いっぱい、いろんなことを聞いちゃおうっと。
「姉様、表情がだらしないですよ」
ハオルの指摘に私は咳払いをして、表情を正す。
「私はライラック。よろしくね?」
そしてとびきりの笑顔で自己紹介をしたのだった。




