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忌み嫌われる夜の令嬢ですが国家の中枢を担っています  作者: think


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誕生パーティー序幕

───バルザーク伯爵邸、門前───


「つ、着きましたぁ……」


疲労困憊のアイリスが車の扉を開く。

ボクは姉様が渡してくださった黒の紙袋を手に、石畳の上へと降り立った。

ふわりと舞うスカートがなんともこそばゆく、顔には出さないがかかとの高い靴がどうも歩きにくい。

よく女の人はこんな靴で歩けるものだ。

そう思いつつ、開いている門の前へと進んでいった。

乗ってきた馬車は伯爵家の厩舎係が管理してくれるので、任せておこう。


「失礼ですが、招待状はお持ちですか?」


騎士風の重鎧に細身の槍を持った門番が二人並び、その内の一人が声をかけてきた。

アイリスが懐から招待状を取り出すと、それを渡す。


「レミゼラルムーン家のライラック様ですか……」


兜を被っているので表情は見えないが、軽んじられているのはわかる。

内心イラッとしたが、姉様ならどこ吹く風といった様子で相手にしないだろう。

なのでボクも冷静に言葉を放つ。


「ええ、通ってもよろしくて?」


「もちろんです。どうぞお楽しみくださいませ」


相変わらず表情は見えないままだが、薄ら笑いを浮かべているに違いない。

思いっきり手刀を兜と鎧の隙間に叩き込んでやりたいところだけど、アイリスが手をギュッと握ってきたので我慢我慢。

はぁ……ストレス溜まるなぁ……


こうしてボク達は中庭を通り、屋敷の扉前へと進んでいく。

すると、扉前に立つ黒服の使用人がボク達に向けて頭を下げた。


「ようこそおいでくださいました。レミゼラルムーン伯爵様ですね。どうぞお入りください」


「ありがとう」


使用人によって開けられた扉を通ると、赤い絨毯が敷き詰められたホールに到着する。

ふん……無駄に豪華にしてるな。

うちの屋敷の方がもっと品がある。

そう思っていると、メイドが声をかけてきた。


「いらっしゃいませ。会場へとご案内させていただきます」


「ええ、よろしく」


ボク達はメイドの案内に従い、パーティー会場へと訪れた。

そこにはすでに大勢の来賓が来ており、各々が親しい人たちと会話を楽しんでいる様子がうかがえる。


ボク達はそんな中を目立たぬように隅の方へと移動した。

とはいえ、黒髪に黒のドレスは目立つのでチラチラと視線を感じる。

当然、それらは良い感情のものではなく、負の感情を多分に含んだ視線であった。


「あらあら……あちらの方はもう日が沈んだようね?」


「おほほほ、奥さま冗談がお上手ですわね?」


趣味の悪い扇子で口元を隠しても、聞こえるほどの声量なのはわざとだろう。

着飾った豚どもが。

少しはダイエットでもしたら?


(ハオ……お嬢様。目が怖いですよ)


傍に控えていたアイリスがそっと囁いてくる。


(普通にしてるけど?)


(お嬢様はそんな風に表情に出したりはしませんよ?)


むぅ……そう言われると困った。

今は姉様になりきる必要があるけど、難しいな。

もういっそ目を閉じておこう。

ボクは黒い紙の扇子を口の前で広げ、目を瞑った。

さっさとプレゼントを渡して帰りたいなぁ。


そんなことを思っていると、


「ご来場の皆様!本日は我が娘のためにお集まりいただきありがとうございます!娘からの挨拶がございますのでお聞きください!」


パチパチパチパチパチパチ!


どうやら始まるようだ。

ボクはパッと目を開くと、ステージの上にバルザーク伯爵とその娘のリアが並んで立っている様子が目に入った。

金髪のツインテールをこれでもかというほどにくるくると巻き、ドレスは真っ赤。

自己主張の激しい女だ。

姉様みたいにお淑やかにできないのかな?

まあ仕方ないか。

姉様は女神だからね。


「皆様、本日は私のために集まっていただきありがとうございます。とても楽しい一時にできればと思いますので、皆様楽しんでくださいませ」


リアの言葉の後に、再び盛大な拍手が巻き起こる。


(ほら、お嬢様も拍手ですよ)


アイリスに言われたので、扇子を彼女に渡して拍手を贈った。


「ありがとうございますわ」


会場に響く大きな拍手の音を、リアは手を広げてご満悦な様子で享受している。


これでやっと一幕は終わりかな?

だけど先はまだまだ長そうである。


姉様……今どうしていらっしゃるのかな?





その頃のライラックはというと、


「うふふ……お腹いっぱいよぉ……」


ベッドの中で素敵な夢を見ているようだ。

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