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忌み嫌われる夜の令嬢ですが国家の中枢を担っています  作者: think


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朝刊と男性たち

───ナディアス新聞、朝刊───

昨夜、ナディアスの劇場『レミゼラルムーン』で大人気歌姫、ローリィを狙った殺人未遂事件が起こった。

犯人はなんと流通大手の御曹司カーズ・ドライク氏。

あわやという惨事になりかけたのを防いだのはライラック・レミゼラルムーン伯爵であり、身体を張った救出劇にはナディアス、王都の民から称賛の声が聞こえる。

だが、ドライク氏の凶弾はライラック伯爵の左腕を貫くことになった。

命に別状はないという医療師たちの診断ではあるが、現在は昏睡を続けており、早くの回復が望まれる。


この記事を読んだ四人の男性は、各々が衝撃を受けた。


───王城、王子の自室───


ソファに軽く腰を落としたセイクリッドはその記事を読むと、わなわなと震え出した。


「ライラック……君は無茶をし過ぎだ……」


新聞の一面を読む彼の口からは絞り出したようなか細い声がこぼれる。


このような状況にあっても私の立場としては、今はなにもできない。

容態を心配して見舞いに行くことすらも……

いや、何を躊躇う必要がある!

彼女の意識が戻ったら、すぐに見舞いに行こう。

もちろん王子としてではなく、彼女を想う一個人として。

だから、ゆっくり休んで回復してくれ。

ライラック。


───異国連合本部長、サクリッドの私邸───


「昨夜の事件の顛末は大体把握していて、ライラック様が無事なのは知っていたが、こうして記事で読むとホッとするな」


円形のテーブルの上にコーヒーの湯気が立ち上る中、彼は木製の椅子に座っている。

夜型の彼は本来ならばまだ寝ている時間なのだが、朝刊を読むためにずいぶんと早起きをしていた。

睡眠というよりも軽く仮眠をとったと言った方が、この場合はしっくりとくるだろう。


「それにしても彼女の周りには事件が集まってしまうようだ。これもこの街の特殊性ゆえだろうか?」


眠気覚ましのコーヒーを口に含む。

ブラックの苦味が少しぼんやりとする彼の頭を覚醒へと導いていく。


「それにしても、素晴らしい人だ。彼女のためなら喜んで婿としてやっていきたいとも思う。受け入れてもらえればの話だがな?」


さて、今はまだ面会の許可は降りていないようだ。

だが意識が戻れば許可も降りるはず。

早くお会いしたいものですね。

ライラック様。


───第一騎士団所属、シェルドの部屋───


実家が王都にあるシェルドはナディアスの街の集合住宅の一室を借りていた。

貴族の子弟という彼に相応しい、広さと豪華さを兼ね備えているが、室内は殺風景である。

必要な家具やベッドしか置いていない室内に唯一存在する、彼の人間らしさは推理小説が詰まった本棚くらいなものだろう。


「伯爵も無茶をなさるお方だ。ご自分の立場をもう少し考えてもらわないと困るのだがな」


ローリィ。

稀代の歌姫ではあるが、伯爵との命の天秤と比べてしまえばその価値はやはり劣るものとなる。


「命は平等ではあるかもしれないが、その価値は平等ではない。そのことくらいご存じなはずなのだが……」


ナディアスの民は等しく私が守るべき存在よ。


初めてお会いしたとき、彼女はこう言っていたな。

冷静な彼女のその温かな人間味に、私の持っていた彼女に対する偏見というものは消え去った。

それからはお互いの警士たちの確執を無くすことに奔走し、今では一定の効果を得ていると思う。


そう思うと、私も変わってものだな。

王都で業務をこなしていたときは冷血漢とも言われ、友人もいなかったが、今では数は少ないが友人と呼べる者はいる。

こんな風に私を変えてくれたのは、あなただ。

無事を祈ってますよ。

ライラック様。



───第三騎士団所属、ハルトの部屋───


「なにぃ!?ライラック様が重傷だって!?」


シェルドの部屋とは違い、こちらは一般的な部屋を借りていて、しかも服があちこちにあったりと乱雑なために足の踏み場もない状態である。


「こうしちゃいられない!治癒院へ行くぞ!」


朝刊を手にしたハルトはすぐさま、着の身着のまま外へと飛び出した。


「申し訳ございませんが、面会時間外でありますしそもそも面会許可も出ていませんのでお帰りください」


だが、治癒院の受付できっぱりと断れてしまった。

それでも彼は一つのことを必死な形相で聞き出す。


「命に別状はないんですよね!?」


「はい、今は眠られていらっしゃるだけです」


「ふぅ……よかった……あっ、ご迷惑をおかけしました」


ハルトはにっこりと笑うと、治癒院を後にした。


「貴族絡みの事件とはいえ、加害者が貴族じゃないから今回の事件は俺の担当外だなぁ……もしかしたらシェルドが担当するかもしれないからこっそり取り調べに混ぜてもらおうか」


朝早いナディアスの街。

行き交う人々も少ない中で、ハルトは思い出す。

ライラックがサインをくれた日のことを。


「ライラック様!今度はお見舞いに参らせてもらいますので!」


乱雑の部屋の中で唯一壁に飾られた真新しい額縁、そこにはライラックのサインが飾られていた。

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