決別の前に
「シュレン様はあっさりとあなたへの興味を無くしたみたいよ」
「そうですか。それは良かったです」
セレイア家から屋敷へと戻った私はローリィへと経緯を話すと、彼女は嬉しそうに笑った。
「それじゃあ明日はあなたのマネージャーに会うようにするわ。今日屋敷にやってきたのでしょう?話し合いたいとか言って」
「はい……ゼオン様に門の前で対応して頂き、渋々と帰っていったと聞きました……」
「なるほどね。それでファレドという男はどういった人物なのかしら?」
「私に対しては良い方でした……私を見出してくれたことには感謝しかありません。ですが……」
「男性としては見れないのね」
「はい……ファレドさんは下の立場の方には冷たい方でして、劇場のスタッフさんや一部のファンの方々を蔑むような言動が私は好きになれませんでした。スタッフさんもファンの方々も大切な方々ですといくら言っても聞いてくれないですし」
「よくいるタイプの人間ね。そのわりには上の立場の人間には丁寧な物腰で接するのよね?」
「はい。その裏表が、嫌いです」
きっぱりと言い放つローリィ。
私もその言葉に賛成ね。
「私がきっぱりともうあなたと関わらないように言ってもいいのかしら?」
「いえ、言わなくていいです」
「あら?」
意外な返事だこと。
「私が……私が自分で言いますので、お話しの際は一緒にいさせてもらってもよろしいですか?」
「ええ、もちろん」
恩人との別れを決めた彼女の表情には、強い覚悟が見て取れた。
「明日は頑張ってね」
「はい!」
まだまだ幼さの残るローリィだけど、しっかりと自分の道を歩こうとしているようね。
ふふふ……少し羨ましく思えるのは、贅沢かしら?
私は、敷かれた道の上を歩いているだけだから……
「ライラック様?」
「ん?どうかした?」
「いえ、少し悲しそうなお顔をしてらっしゃったので……」
「ああ、ちょっとだけお腹が空いたから顔に出ちゃったみたいね」
「そうですか。ならお茶になさいますか?」
「そうね。一緒に飲みましょう」
「いえ、私はお仕事がありますので……」
「主人が命じているのだから言う事を聞きなさい」
「そ、それではお言葉に甘えさせていただきます……」
「ええ、アイリスも呼んで一緒に楽しみましょう」
こうして少しの間楽しいお茶会をして過ごし、その後私は執務室へと戻って仕事をこなした。
そして翌日、午後一時。
私とローリィが執務室で待機している中、
コンコン。
「お嬢様、お客様がいらっしゃいました」
ゼオンの来客を告げる声が聞こえてきた。
「そう。応接室へお願い」
「かしこまりました」
「さあ、覚悟はいいかしら?」
「……はい」
そう気丈に言うローリィだけど、少し身体が震えている。
「大丈夫。あなたは私が守るから」
「ライラック様……」
私は震える彼女の身体を優しく抱きしめた。
「私……ライラック様と出会えて本当に幸せです……」
「ふふっ、大げさな娘ね」
「大げさなんかじゃありません。その……大好きです……」
「そう言ってくれると嬉しいわ。ありがとう」
少し身体を離すと、真っ赤に頬を染めるローリィがいた。
……絶対に私が守護るから!




