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忌み嫌われる夜の令嬢ですが国家の中枢を担っています  作者: think


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第一の容疑者 セレイア家のお坊ちゃん

ローリィの子守唄で心地よい睡眠を得た私の目覚めは、非常に晴れやかなものとなった。

そんな良い気分の中で、時刻は丁度正午を指している。


支度をして食事を取ったら、早速セレイア家に向かいましょうか。


第一の容疑者として挙げられたシュレン・セレイア。

伯爵家のお坊ちゃまで人格、能力ともに秀でたものはないという人物像。

それに加えて家族での浪費が凄いようで、今や多くの借金を抱えているという。

それらを令嬢方には見抜かれており、彼と結婚しようとする令嬢は誰も居らず不貞腐れている。


「うーん……改めて読んでみたものの哀れな人ね」


レミゼラルムーン家がまとめた人物評を執務室で読んでいたのだけど、シュレン様には何一つ良いところがない。

なんだか可哀想に思えてきたわ。


コンコン。


「お嬢様、出立の準備が整ったようです」


「わかったわ」


ゼオンの呼びかけを聞いた私は椅子から立ち上がった。

そして私が玄関ホールへと赴くと、メイド服のローリィが声をかけてくる。


「ライラック様、セレイア家に行かれるのですよね?お気をつけください」


「まああちらは落ちぶれても伯爵家。私になにか危害を加えようとすることはないわよ」


「ですが……」


「心配しないでいいから。もし容疑者じゃなかったとしてもしつこい求婚だけはやめさせてくるわ」


私はローリィの心配をにっこりと笑顔で返した。


「はい!よろしくお願いします!」


さて、出発と行きましょうか。


バタン。


私は勢いよく扉を開いた。


それからいつもの馬車に乗り、王城がある北部を目指す。

貴族街はその周辺にあり、今回訪れるセレイア家もそこにある。


ガラガラ……


屋敷を出てから三十分ほどで、馬車がスピードを緩めて止まった。


「お嬢様、到着いたしました」


「ありがとう」


私は御者の後ろについていき、セレイア家の門前に到着する。


さすがセレイア家、とても豪華なお屋敷ね。

私の屋敷とは大きさも豪華さも違う。

立地を考えて、屋敷の価格を付けるとしたら十倍は違いがあると思う。

先祖の方は偉大だったのよねぇ……


「レミゼラルムーン家の当主、ライラック様がシュレン様にお会いになりに来た。お伝えを願う」


「ああ、ライラック様ね。はいはい、話は聞いてますよ」


「貴様、なんだその態度は!」


「別に構わないわよ」


「しかし……」


「同じレベルに合わせて争う必要はないわ。レミゼラルムーンに誇りを持つなら高いレベルでいなさい」


「はっ」


御者の男は深く頭を下げて、それ以降はただ黙った。

それでいい。

わざわざ声を荒げるほどの価値は、この家にはないのだから。


「お待たせしたね。僕がシュレン・セレイアだ」


応接室へと訪れてから二十分ほどが経過し、目的の人物がやってきた。

長い金髪に整った顔立ちは目を引くけど、白いスーツの胸に赤いバラという格好が痛々しさを感じさせる。

舞踏会といった場所ならともかく客と会おうとする格好ではない。


「ごきげんよう。ライラック……」


「ああ、そんなことはどうでもいい。約束のものはあるかな?」


挨拶の途中に口を挟まれる。


「はい、お約束のものでございます」


私はまったく気にすることなく、持ってきた木製の鞄を差し出した。


「ふふっ……おっとと!」


片手で受け取ろうとしたシュレン様だけど、結構重いのよね。


「こほん!どれどれ?」


シュレン様はさっさとソファに座ると、鞄の中を開く。

するとそこには大量の金貨が入っていた。

三百枚入っているので、一般の方の年収くらいかしら。

私と会いたいなら金貨を持ってこいと言われたので持ってきたのだけど、浅ましいにもほどがあるわね。


「ふふん。ご苦労さま。帰ってよいぞ」


「あら、こちらの用件は終わっておりませんよ」


「ちっ。いったいなんだ?」


「シュレン様は、ローリィ嬢に求婚なさっていますよね?」


「ああ、我が高貴な家柄に入れてやろうと言っている」


「だけど断られてしまったと」


「まったく、物の価値が分からん女だ」


「それでもまだ求婚されているのはどうしてですか?」


「教育してやろうとしているだけだ!汚らしい場所から救ってやるという僕の優しい心が分からんようだからな!」


まるで子どものような言い草に呆れ果ててしまう。


「残念ですが、ローリィ嬢はシュレン様の求婚には応えられないとのことですので、お伝えに参りました」


「ああ、わかったわかった。もう興味もないわ。そんな女など」


あら、潔いほどの引き下がりね。


「それにしても、貴様の家は儲かっているのだな?私と会うだけでこれほど容易く金貨を渡すなど……」


「ええ、使い道がなくて困っておりましたので助かりましたわ」


「……ふふん。卑しい伯爵家ではあるがこの私のもとに来てもいいのだぞ?」


「お断りですわ。このバカ息子」


「貴様!」


シュレンは私の腕に手を伸ばしてきた。

だけど逆にその手を握り返して関節とは逆の方に曲げてあげた。


ギリギリ……!


「いたたた!」


「女性を口説くなら、本気で愛してからなさい。お金に釣られてではなくね」


「は、離せ!」


「わかったかしら?」


「わかった!わかったから!」


「あとはもう少し鍛錬なさることね。シュレン様」


「うるさい!さっさと帰れ!」


「言われなくても帰るわよ」


これでローリィへの執着はなくなるわね。

恨みの対象は私に移ったのだから。

まあ彼にできることなどせいぜい他家への悪口くらいかしら。


ふふふ……それにしてもあの金貨、明日には無くなってそうね。

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