初めてのお友達
「ありがとうございます!ポンザが捕まったおかげで離婚できそうです!」
ベレッカはポニーテールを揺らしている。
椅子に座っておしゃべりしているだけなのに、元気な娘ね。
「でないとデレリアット侯爵家も関与していたと思われるものね?」
「はい!両親もさっさと縁を切れ!だなんて言い始めて、調子がいいですよね~」
私はポンザの逮捕が世間に広まった後、仕事終わりのベレッカの自宅を訪れていた。
彼女は笑顔で私を出迎えてくれ、なんとも幸せそう。
「それと新聞読みましたよ!一人で誘拐犯たちの組織を壊滅させたって!そのことがきっかけでポンザを含めた多くの貴族が捕まったんですよね!」
「これでまた社交界では嫌われものになりそうだけどね」
「ああもぉ!社交界ってやつは!お仲間意識が強いんですから!」
大きく頬を膨らませるベレッカ。
そんな様子が愛らしく、喜怒哀楽が豊かな彼女を羨ましく思う。
「ところで、パン屋さんの息子さんとは上手くいっているの?」
そんな彼女に、私は以前聞いたことの進展を聞いてみることにした。
「えぇ……?それ、聞いちゃいますぅ?」
するとベレッカはポッと頬を赤く染める。
「あら、とても聞いてほしそうね?」
「彼、クルト君って言うんですけど、とっても優しくてカッコいいんですよぉ!それに今度のお休みに一緒に遊びにいかない?って誘われちゃったんです!」
「いいじゃない。ちゃんと了承したの?」
「いいえ、断りました……」
「えっ?どうして?」
「今はまだ、私は既婚者の身。全てを終わらせて自由の身になってからお誘いを了承しないといけません」
先ほどまで浮かれていたベレッカは真剣な表情になる。
この娘は無理やりな結婚でも筋を通そうとしているのね。
ますます好きになりそうだわ。
「偉いのね」
「えへへ……私の自己満足なんですけどね?」
ベレッカは恥ずかしそうに頬を搔く。
「そういうライラック様は気になっている男性はいないんですか!?」
「わ、私?」
「ええ!どういった男性が好みなんでしょうか!?」
「そうねぇ……」
言われてみて思ったけど、忙しい日々に追われてそういったこととは無縁で過ごしてきた。
思い当たる男性で言うと……
セイクリッド殿下。
懐の広い優しい方だと思うわ。
彼が王となっても、今のような平和な世が続くでしょうね。
サクリッド様。
見た目の冷たそうな印象とは違って意外と情熱的な方ね。
シェルドは几帳面過ぎるけど、そこが彼の良いところでもあるわね。恥ずかしい言葉はやめてほしいけれど。
ゼオンは仕事の出来る部下って感じでそういう目で見たことはなかったわね。彼女とかいるのかしら?
ハオルはもう少し大人になってほしいものだわ。
「私を愛してくれる方なら、多くは望まないかしら?」
「ええ!?もったいないですよ!若くして伯爵家当主!知勇兼備に加えて美しさをも持つ令嬢のライラック様なんですからもっと求めましょうよ!」
「そこまで言われると照れるけれど、私を愛して傍にいてくれる男性ならいいじゃない。あなたもそうじゃない?」
「そうですねぇ……お金はあってもポンザみたいなのはお断りだし、顔が良くても浮気性だったら嫌ですね」
「そうでしょう?」
「はぁ……ライラック様ってなんだかすごくお姉様みたいな感じがします。私もライラック様みたいになりたいなぁ……」
「ふふふ、無駄に人生経験が豊富なだけよ。私はベレッカみたいに明るくて可愛い娘になってみたいわ」
「そ、そうですか?なんだか照れますね……」
ふぅ……歳の近い娘とのおしゃべりはこんなに楽しいものなのね。
「ありがとう。ベレッカ」
「えっ?いきなりどうしたんですか?感謝したいのはこっちですよ!」
「ううん。私ってこうやっておしゃべりできるお友達がいないのよね。だから嬉しくって」
「お友達って思ってもいいんですか?」
「も、もしかして……嫌だった……?」
「はぁん!?そんなに可愛らしく聞かれたらドキドキしちゃうじゃないですか!滅相もありません!お友達って思ってもらえて光栄です!」
「それならお願いがあるんだけど……」
「なんでもどうぞ!」
……なんだか照れるわね。
「ライラって、呼んでくれないかな?」
「……」
「ベレッカ?」
「ああんもぉ!可愛すぎぃぃぃ!ライラって呼んでいいのね!?」
「ええ、もちろん!」
「ライラ♪」
「なぁに?ベレッカ」
「呼んでみただけ♪」
「「うふふ」」
私たちはにっこりと微笑みあう。
私にとって初めての友だちができた瞬間だった。
あっ、アイリスは可愛い妹みたいな存在だからね?




