敵地襲撃!
石畳を走る中、窓をのぞく。
するとどの店もシャッターが降りているが、どの店も営業そのものをしていないように見えた。
境界線がどこにあったのかも分からない間に、すっかりと街は生気を失っているようだ。
ある程度の話は諜報員から聞いていたけど、ここまで深刻だったとわね。
「次の交差点を右に!」
「分かった!」
御者席から聞こえる二人の声に争っている様子はない。
ハオルもこういった時は大人ね。
ガラガラガラガラッ!
そうして異国連合本部から馬車を走らせて、十分ほどが経過すると、
「あそこだ!数年前まで本部として使っていた建物が最有力候補だ!」
「姉様!ブレーキをかけます!」
「ええ!分かったわ!」
ガクッとスピードが落ち、ガタンガタンと車輪が数回回った後に、馬車は停止した。
私は居てもたっても居られなくなり、すぐさま馬車から降りる。
すると、先ほどの異国連合本部と良く似た三階建て建築物があった。
「門番もいないなんて、よっぽど余裕なのかしらね」
「……申し訳ありません。すっかりと舐められてしまっているようで……」
御者席から降り、私の隣に立ったサクリッド様は、困ったようにため息を吐いた。
「サクリッド様が武器を持って攻めてくるはずがないと思っているのでしょう?」
「なんとか話し合いで解決を図っていたのですが、それが悪手でした……」
「いいえ、私はサクリッド様のような対話主義は素晴らしいと思います。人としての最高の争いの解決手段ですから」
「ライラック様……」
「姉様これからどうしますか!?」
ハオルが会話の切れ目に口を挟む。
「そうね。サクリッド様、子どもたちがいるとしたらどこですか?」
「おそらく地下かと思われます。地下に上がるための通路は一つだけなので見張りが楽ですからね」
さて、どうしようかしら。
とりあえずサクリッド様は……
私は馬車の中で待機してもらうように伝えようとしたとき、
「私も連れていってくださいね。一人で待つよりもライラック様の傍にいた方が安全だと思いますし」
「ふふっ……そうなさいますか?」
「姉様!提案です!ここはまず二手に分かれて子どもたちの捜索を優先すべきだと思います!なのでサクリッド殿はボクと一緒に地下へと向かう方が合理的かと!」
「あら?私は一人で何を?」
「ギゼルを捜索、そして確保していただければと」
「ハオルシア君、姉君を敵地で一人にさせるつもりか?」
「それが一番の安全策なんだ。ボクたちは子どもたちが最優先で、もし彼らを人質に取られた場合が最悪のパターンだからな」
「ならばライラック様も一緒に……」
「サクリッド様。敵に迫られたとき、まず守るのは王の場所でしょう?そして次に価値のあるものの場所へ。そこで子どもたちを連れている状況の私たちと出会ってしまえば、あなたや子どもたちを守りながら逃げるのは困難です。ならば、王に集まった集団を叩きのめしてしまえば良いのです」
「……ライラック様ならそれが出来ると?」
「ええ」
私は自信を持って笑った。
「それに、姉様の武力は守るには不向きですからね」
「まあ!失礼ね、ハオル」
「ふふふ……わかりました。お二人を信用しましょう」
「あなたも変わった人ですね。会って間もない私たちに命を預けるなんて」
「長ければいいなんてことはありませんよ。私と弟のようにね。ですがライラック様ならば、この命、預けられるます」
「お前がこれから命を預けるのはボクだ」
「いや。私が心より信頼しているのはライラック様だ。そのライラック様が信頼しているからついでに君も信頼してやってやるだけのこと」
「貴様……」
「はいはい。作戦は分かったでしょう?二人ともしっかりとね?」
「持ちなさいですとも、ライラック様」
「承知しました、姉様」
言い争いになりそうだった二人だけど、一転して私には笑顔を向ける。
この二人、似た者同士ね。
私はくるりと振り返ると、錆びた鉄柵の門があった。
それでは……お邪魔しますわ!
バキィッ!
私は塞がっている門を蹴り飛ばすのだった。




