門を突破せよ!
前回の訪問時とは違い、今回は余裕がない。
なので西地区も堂々と家紋付きの馬車を走らせる。
こちらも朝のため、行き交う人々はほとんどいないようで馬はスムーズに車体を運んでくれていた。
そして出発してからおよそ二十分。
「姉様、異国連合本部に到着しました」
「分かったわ」
馬車が止まり、ドアを開けてくれたハオル。
私は馬車から降りると、頑張って走ってくれた愛馬に感謝する。
「ありがとう。ローゼン」
ブルッブルッといななく愛馬は流石に疲れをみせているが、優しい瞳で私を見てくれた。
「これはどういったことで?」
そんな愛馬とのやり取りを邪魔してきたのが、二人組の黒服の熊亜人たち。
以前にも会った二人組ね。
仲が良いのかしら?
「サクリッド様に会いに来たの。通してくれる?」
「本部長は既にお休みになられている。時を改めてほしい」
「残念だけど、そんな余裕はないのよね?こちらは」
「では、どうするつもりだ?」
「押し通るまでよ」
「……ここは、通さん!」
私が敵意を見せた瞬間、二人は私とハオル目がけて一直線に飛びかかってきた。
「ハオル。一人は任せたわよ」
「ええ、姉様」
私はハオルにそう告げると、目の前の男に集中する。
すると、一切手加減のない拳が私の目の前に迫ってきた。
渾身の一撃なのだろうけど、力任せな直線的な動きでは私を捉えることなどできない。
僅かに横にずれると、拳は私の隣を通り過ぎていき男の身体は前のめりになった。
その瞬間、右腕を掴み男を投げる。
「ぐおっ!」
すると男は石畳の上に顔からぶつかっていった。
あらら、痛そうね。
「この……あばずれがぁぁぁ!」
鼻血を出しながらも男の戦闘意欲は少しも落ちることはなく、なおも私に向かってくる。
今度は拳ではなく、その巨大な身体でタックルを仕掛けてくるつもりらしい。
「一応言っておくけど……」
私は正面から男を見据え、魔力を身体中へと巡らせた。
「私は力でも負ける気はないわよ」
無遠慮に私の腰に手を回した男。
「う、動かんだと……!?」
「軽々しくレディの身体に触れちゃダメでしょう?」
私は密着した状態から男のお腹に向けて、手甲で固めた拳を一発お見舞いする。
「ごふっ……」
その結果、巨大な身体はズシンと音を立てて崩れ落ちていった。
「ふぅ……」
私は男が完全に動きを止めたことを確認すると、身体に纏わせた魔力を解く。
これはタツ・カズシマ直伝の魔闘術。
魔力を身体中に巡らせることで普段では振るえない力を出し切るというもの。
単純な肉体強化術は足し算であるのに対し魔闘術は掛け算に相当し、女性でも信じられないほどの力を発揮できる。
その分、習得は難しいけど小さな頃から武術を学んできた私たちは使用できる。
ドシン!
そう私たちは。
私の隣で別の男と対峙していたハオルの方も終わったようね。
「……姉様の方が早かったですね」
悔しそうにそう言うハオルを見て、やっぱり彼も男の子なんだなと思わせてくれる。
「ふふふっ。強くなったわね」
「姉様……」
「さぁ、行くわよ。さっさとサクリッド様にお会いして愚か者の居場所を聞かないとね?」
「あの……思ったのですが……」
「どうしたのハオル?」
「この門番たちに聞いてみてもよかったのでは?」
……あっ。
「す、素直に教えてくれるか分からないし!情報の正確性もあるかどうか分からないでしょ!」
「さすが姉様!そこまでお考えでしたか!」
「……まあね」
ハオルは憧れの視線を送ってくれるけど、ちょっと心に来るわね……
どうも頭に血が昇っているようだわ。
冷静に……冷静に行くわよライラック。
ガチャッ……
私は自分に言い聞かせるように鉄製の門を開くのだった。




