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忌み嫌われる夜の令嬢ですが国家の中枢を担っています  作者: think


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氷の微笑

「どうぞ。こちらでお待ち下さいませ」


老紳士に通された場所は至ってシンプルな応接室。

赤い絨毯、壁には絵画、テーブルは木目が美しい。

華美でもなく質素でもなく上品言えるわね。


「さてと、ゆっくりと待たせてもらいましょうか?」


「……姉様の心臓は鋼鉄で出来てるのかな?」


私がロングソファーにポスンと腰掛けると、ハオルが呆れた様子でこちらを見てくる。


「まぁ、乙女に向かって失礼ね」


コンコン。


なんてことを話していると、すぐに待ち人がやってきた。

私は席を立ち、どうぞと声をかける。


「失礼します」


低く渋い声。


ガチャ。


「お初にお目にかかる。私はサクリッド・シルヴァと申します」


ヤギのような角に真っ赤な瞳に白い肌。

灰色の髪を逆立たさせており、真っ白なスーツと赤のネクタイがとても良く似合っている。

ひと昔前では悪魔とも敬称された容貌は、命の温かみを感じさせない。

彼は恭しくお辞儀をして、自分の名を述べた。

それに返すように私も自己紹介をする。


「ご丁寧にありがとうございます。私はライラック・レミゼラルムーン。そして」


「弟のハオルシアです」


「よろしくお願いいたします。どうぞお二方、おかけになってください」


そうして自己紹介を終えた私たちは対面になるようにソファーに腰掛けた。


「それで?本日はどういったご用件で?」


老紳士がお茶を持って来てくれたのと同時に、あら美味しい。サクリッドが問いかけてきた。


「うふふ、ただのご機嫌伺いですの。ご挨拶が遅くなって申し訳ありません」


「いえいえ、本来であればこちらからご挨拶に参らなければならないところでしたが、少々都合がつきませんでして」


「まあ、お忙しいのですね。羨ましいですわ」


「ははは、レミゼラルムーン家があっての商いですので。異国人である私たちを受け入れてくれているのですから」


「異国に文化を教えてくださっておりますし、お互い様ということですね」


「そうですね」


お互い和やかな空気で話が進む。

うん、この辺りで斬り込んでみましょう。


「ところで、デレリアット侯爵という方をご存じですか?」


「ふむ……心当たりがないですね。そちらの方がどうなさいましたか?」


反応を見る限り、本当に知らなさそうね。

誤魔化すことも可能だけど、こちらも素直に返しましょう。


「不自然に羽振りがよろしいので調べているところですの。そうしたらそちらの組織との繋がりが見えて参りましてね?」


「私どもがその侯爵様と不法行為を働いている、と?」


「そこまでは申しておりません。不自然なお金の流れがあるように思えるだけです」


サクリッドは私の言葉に少しの間沈黙すると、


「組織が大きくなり、全てを把握している訳ではありませんが、私個人としては法を守り、商いをさせてもらっている身です。なのでそのようなお言葉は非常に不愉快です」


「それは大変失礼いたしました」


「ですが、組織の運営は得てして難しいもの。一部の跳ねっ返りがいることも否定できません。こちらでも調査をしますのでどうかお時間をいただけませんか?」


「そうしていただけると助かります」


「これで堅い話しは終わりで良いですか?」


「そうですね」


「ではここからはプライベートな話しとなりますが、ライラック様はお一人の身ですよね」


「ええ」


「よろしければ、私と婚約なさいませんか?」


「……はっ?」


にっこりと微笑むサクリッドに、私は唖然とした。


「姉様を貴様に渡すものか!」


「弟君、落ち着いてほしい。これには理由があるのだから」


興奮するハオルを両の手のひらでなだめる。


「理由だと……!いったいなんだ!」


「一目惚れという理由だよ」


「まぁ……」


こういったストレートな好意は嬉しいわ。


「何が一目惚れだ!ふざけるな!」


「こら、ハオル。失礼でしょう?」


「うぅ……姉様……」


先ほどまで怒り狂っていたハオルが、途端に大人しくなる。


「ふふふ、弟君も姉君には敵わないようですね」


「うふふ、可愛い弟です」


「ところで、先ほどの申し出はお受けいただけますでしょうか?」


「そうですね……」


サクリッドは美青年だし、亜人や異国人いった偏見もない。

だけど……


「私はサクリッド様のことをよく存じ上げません。なのでお受けできません」


「姉様……!」


私の答えにハオルの瞳が輝く。


「なるほど……では、良く知った間柄になれば可能性はあると?」


「うふふ、ご想像にお任せします」


私が微笑むと、彼もまた微笑を浮かべるのだった。




「それでは失礼いたします」


「ええ、有意義な話し合いができ、嬉しく思います。今度はこちらから出向かせていただきますので、その際はよろしくお願いいたします」


「はい、お待ちしていますわ」


ガルル……と睨みつけるハオルのお尻をつねり、私たちは応接室から出ていく。

どうやらサクリッドという人物は、デレリアット侯爵とは無関係のようだ。

短い時間ではあったけれど、彼の人柄は垣間見えたと思う。

違法なことをしてまでお金を稼ぐ人じゃない。

私の人を見る目が間違っていなければいいなと、そう思うのだった。

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