スレ番42の有明色の移動
初期スキルも取り、能力値も確認が終わったので、ステータス画面内で光っているメールマークに触れる。
何気にずっと光っていて気にはなっていたのだ。
メールボックス内には『氷河期世代へのお知らせ』という表題のメールが届いていた。
メール内容は、氷河期世代には長年苦労を掛けて申し訳なかったという謝罪から始まり、今までの苦労を取り返すためにも、ダンジョンを上手く活用して欲しいことを伝えている。
最後に、匿名掲示板の氷河期世代板を定期的に巡回しているので、何かあれば書き込んで欲しいこと、氷河期世代板には各種加護を掛けているので、安心して同世代の人間と交流して欲しいとのこと。
その下には板に掛けられた各種加護とその説明が記載されていた。
これは間違いなく、あのお方からのメッセージだ。
取るに足りない一般庶民にも慈悲に溢れるこの対応と、優しさしかないこの文章。
これはディスプレイで舞っていたあの女からのメッセージではなく、紛れもないあのお方からのお言葉だ。
ああ、未だ直にお会いできないけど、掲示板には降臨されるのだ。何とも有難いことだろうか……
新たな秩序を作ったあとは、放置していても何の咎もないのに、数多の人々のことを考えてくださっているとは。
早く力を付けて、お役に立てるよう一層励まなくては……
とりあえずは1日の始まりと終わりには、このメールを読み活力としよう。
大事なメッセージだ、万が一にも間違って消去しないようにロックし永久保存する。
そしてメッセージを受け取ったことで、漠然としていた己の能力強化の方向性がはっきりとした。
まずダンジョン踏破とダンマス募集時のお声がかりを目指すため、物理的な強さを身に着ける。
その後は古巣にいる塵芥どもを排除するために、必要なスキルを根こそぎ取ろう。
あのお方も獲得可能スキルは本人の趣味趣向や行動によると仰られていた。
だとしたら望めば必要なスキルが得られるに違いない。
決意も新たに一旦ステータス画面を消すと、今度はアイテムボックスの確認に移った。
どうやらアイテムボックスという物は手足の延長みたいなもので、ボックス内がみたいと思えば脳裏に収納物が浮かぶし、取り出したいと思えば、空間が歪み入口ができる。
どんな理屈かは不明だが、アイテムボックス内の広さも把握が出来た。
LV1でのアイテムボックス内の広さは8畳間程度だ。
今乗ってるSUVなら収納出来そうだな。
ステータス画面が起動したからか、あのお方が配布した初心者セットもアイテムボックスと武器収納庫に収納されていた。
初心者セットの内容は、一通りの武器種に簡易的な革鎧と木製の盾、体力・魔力回復薬と各種状態異常回復薬、ステータス初期化の珠だ。
あのお方のお心遣いに感謝しつつ、有難く武器防具は使わせてもらおう。
あのお方から頂いた薬系のアイテムは出来るだけレガリアとして残しておきたい……
そのためには強くならねばならない。
決意と共に車を降りると、車をアイテムボックスに収納し樹海に続く遊歩道へと足を踏み入れた。
あのお方のことだから、洞穴風穴氷穴などにはダンジョン入口は作らないだろう。
できるだけ元の世界に調和する形で、ダンジョンを作成のため尽力されていたのだ。
それは掲示板で意見を募っていたことからも見てとれる。
そのようなお方が、貴重な自然物を壊すような場所に入口を作る可能性はゼロに近い。
となれば考えられるのは、樹海の中。
それも樹海の真ん中ではなく、一般人が比較的アクセスしやすい樹海でも外縁部で道が整備されているような……
そんな予測の元、暗闇を月あかりと手元のライトを頼りに遊歩道を歩くこと十数分。
まさかあのお方への理解が足らなかったかと思い始めた頃、樹海の中に光が見える。
ああ、やっぱり間違ってなかった。
早足で光へ向かうが、そこに着くまでの距離がもどかしい。
光源に近づくにつれ、薄っすらとしていた光が、どんどん強くなる。
光によって周囲の明るさが昼間のようになった頃、望んでいたものが見つかった。
ダンジョンの入口だ。
やはりあの方への理解は間違っていなかったのだと、改めて考えの正しさを確信する。
興奮を抑えきれずに思わずひれ伏し、感謝と敬意を捧げると、スマホに画像を残した。
これで、いつでもあの方の偉大な功績と共に歩むことが出来るのだ。
この溢れるあの方を信じる心を日々の活力に変えるため、この画像を御神体として、朝な夕なに祈ろう。
入口の周辺は開けており、木や岩などはなく、背丈の低い草が疎らに生えている程度だった。
最初はある程度ダンジョンで戦ったら、一旦入口まで戻って休むのも選択肢の1つかも知れない。
入口の広さは大規模マンションのエントランスくらいはあるから、中の通路も奥はともかく入口付近ならそこまで狭いってこともないだろう。
つるりとした石で出来ている入口の材質は、現実世界で存在する素材でいうなら大理石が近いだろうか。
ただ色は大理石のような白系ではなく、深い瑠璃色をしていた。
それが石の近くでは、石の色そのままに光り、距離が離れるほどに、色が消え明るさのみが残る。
光量としては何か作業するのに充分なものだろう。
そんな光の元、ダンジョンに入るための準備を始めた。
ダンジョンに入ることを想定し、今の基本的な服装はジャージに登山靴という出で立ちだ。
チグハグな服装だが、動き易さと、転倒を防ぐという機能と、手に入れやすさの観点で、一番コストパフォーマンスが良かった結果である。
手に持っていたスマホをアイテムボックスに入れ、武器収納庫から防具を取り出し、ジャージの上に装着する。
どうやら自動で調整されるようで、装備品を身に着けた途端に丁度良い大きさに変化した。
体格の違う人々に装備品を配るのだ。
いちいちサイズを計るのは事実上不可能に近い。だから、装備品にこういう特性を付けたのだろう。
効率と他者を思いやる心が同居しているあのお方の何と優れたことか!
微に入り細を穿つこの気遣いに感動しつつ、今後使うための武器を取り出す。
得物は槍を選んだ。
剣術など学んだことはないから、候補として剣は除外。
武術を学んでいなくても、ある程度ダメージを見込める得物がいいと考えると拳も除外。
残るのは槍、棒、鎚、戦棍になるが、1つの武器で複数の攻撃方法が取れる得物がいいので、鎚と棒は除外。
出来れば敵との距離を取りたいという理由で、戦棍を除外した結果の槍だ。
入口付近ならばダンジョンの道幅も狭くはないだろうという考えもある。もし奥まで進んで道が狭くなるようなら、戦棍に切り替えることも視野に入れよう。
試しに覚えた鑑定スキルで、手に持った槍を鑑定してみる。
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初めての槍
物理攻撃力+25
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本当に鑑定出来た。
何度目か分からない感動を覚え、これからダンジョンに入るという事実に、軽い武者震いが起こる。
そうだった、防御力がどれくらい上がったかも確認しとかないと……
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能力値
STR(力)・・・150
VIT(生命力)・・・100
DEX(器用さ)・・・80
AGL(敏捷性)・・・100
INT(知力)・・・250
MEN(精神力)・・・500
LUK (運)・・・50
HP 500
MP 1500
ATK(物理攻撃力)・・・150(+25)
MAT(魔法攻撃力)・・・―
DEF (物理防御力)・・・100(+25)
MPR(魔法防御力)・・・375(+0)
装備品
武器 初めての槍(+25)
頭 初めての兜(+10)
胴体 初めての軽鎧(+15)
盾 ―
その他 ―
アクセサリー ―
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画面を開き、能力値を確認した。
軽鎧のせいか兜と鎧の防御力にそこまで差がないが、防御力の違い5は数値以上に差があるのか?
それと装備した防具で上がるのは物理防御力だけだ。入口付近は魔法攻撃する敵が少ないのかも知れない。
未知の概念を深く考えたところで分かるはずもなく……ダンジョンに入り実地で理解するしかないか。
そう結論づいたら、あとはダンジョンに入るだけ。ただ、入ってしまえば、暫くは外界との連絡は取れなくなる。
入る前に、あのお方と初めて邂逅した掲示板に顔を出しておこうか。
アイテムボックスに入れていたスマホをもう一度取り出すと、掲示板にアクセスし書き込むと再度スマホをしまう。
そして一度くるりと周囲を見回すと、ダンジョンに入った。




