表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/48

スレ番42の薔薇色の希望

 木曜日の夜23時59分、オレは自宅の窓から、夜空を見上げる。

 株はこの3日間で全て売却した。いわゆるノーポジってやつだ。

 イッチの言葉が本当なら、あともう少しで……


 瞬きせずに、夜空を見上げる。


 そしてその時がきた。


 月あかりに照らされていた空間に歪みが出来る。


 夜空より暗い黒、太陽のように光る金、雷のように弾ける銀が、ないまぜになり広がっていく。

 空想の世界ではありがちで、現実にはまずあり得ないその光景。


 オレはこの美しくて誠実な情景から、目を逸らさない。


 イッチを信じようと思ったときから、心の奥底で望んでいた風景。


 歪はある程度広がると、今度は縮小をはじめ、物体として質量を持ち出し、虚空に固定された。

 ある程度の厚みがある透明な板、それに72:00:00という、デジタル表示が現れ、すぐさまカウントが始まる。


 71:59:59 、58、57……


 ああ、始まったとうとう始まった。

 今のオレはどんな顔をしているのだろう。頬に涙が伝ってるから、泣いているのは分かる。

 でも嬉しい、歓喜、狂喜でいて、狂気。


 イッチよ、いや呼び捨ては失礼だ。


 ああ、オレはあの方の姿すら知らない。


 なんて呼べばいいかすら、分からない。


 その御名が分からない。


 知りたい、知りたい、そして今度こそ間違えない。信ずべき存在を間違えない。

 オレはあの方のお役に立ちたい。側に侍ってあの方の手足になりたい。あの方の尊い考えの元、世界を清めたい。

 あの方に思うままに振る舞ってほしい。


 オレの今までは、あの方に会うまでの修行だったに違いない。

 裏切られても尚、あの方を信じられるかという踏み絵だったのだ。

 あいつ等への恨み、憎しみは確かに根付いている。

 それがあってこそ、あの方へオレの全てを捧げることができるのだ。


 もちろん、今でもあいつ等への感情は何も変わらない。

 だが今のオレにとって、あいつ等は、あの方の崇高なる理想を脅かす敵というだけの存在。

 邪魔するならば、滅するだけの虫けらにも及ばない程度の存在だ。


 あのとき興味はなかったが、確かあのお方は、ダンジョンマスターになれるタイミングが来たら、アナウンスするといっていた。

 ということは、あの方から直接お声がけがあるということだ。

 ダンマスになれば、あの方との謁見の機会も与えられるに違いない。

 ああ、それはいかほどまでの福音になるのだろう。

 

 あの方はダンマスになるための条件として、高レベルなのが最低限といっていた。

 尊い御身に侍るのだ、レベルが高くなければお役にも立てないはずだ。


 そうと分かれば、行動するしかない。

 他の人間に先んじて、ダンジョンに潜り、レベルアップに励むのだ。

 

 あの方は街中にもダンジョンを作った、といっておられたが、活火山や休火山にも場所を作ったともいいっておられた。


 街中のダンジョンは現状位置の特定ができていない。

 その上、ダンジョンが出来れば、真っ先に発見されるはず。

 天罰が降されるといっても、最初はそんなこと分からないし、住民の危険性を大義名分に、確実にあいつ等は交通規制を行うはずだ。

 街中のダンジョンは、即座に潜りたいオレには不向きだろう。


 では山ならどうだ? 活火山は元から入山規制が敷かれてる可能性が高いが、休火山なら観光地化されている場所も多いから容易に立ち入れる。

 

 一番観光地化されている休火山、オレが目指すべきは富士山だ。

 富士山は広いが、あのお方の思考回路を想像すると、交通の便が悪い場所にダンジョンの入口は作らないだろうし、それなりに広い場所にあるはず。

 ある程度場所は絞れる。

 それに観光地とはいえ、自然の中だ。封鎖の優先順位もそこまで高くないと思われる。

 それまでにダンジョンに入ってしまえば、あとはどうとでもなるはずだ。

 

 そうと決まれば、今から富士山に車で行く準備をしよう。

 水と携帯食料を1年分くらい購入して車に積もう。寝袋などの寝具も買って車に積もう。

 国民たちが混乱する前に、保存食を買い集め、その足で富士山に向かおう。

 睡眠? そんなの富士山近郊に行くまでお預けだ。


 月曜日の始まりと共に、ステータス画面が実装される。スキルでアイテムボックスを取得して車ごと収納してしまえば、宿泊場所にも困ることはない。

 収納力不足なら最悪、ダンジョン前に車を乗り捨てたっていい。

 車なんて、また買ったっていいんだ。金はある。


 ああ、早くダンジョンに潜りたい。

 そしてあの方に侍るための、第一歩を踏み出すのだ。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ