スレ番9の『美少女はサブスクを覚えた』
めーちゃんが押し入れを神格化した後は、特になにもなく時間は過ぎていった。
時間が経つにつれ、若くない俺の体が疲れを訴えだしたので、今日は少し早めに布団に入って横になると目を瞑る。
昨日から今日にかけて色々あった、怒涛の出来事に想いを馳せる。
リストラ宣告され、幼なじみのめーちゃんと再会し、めーちゃんが神さまで、日本にダンジョン作る事になって、凄い力で即日退職して、押し入れが神域化して……で、今に至るんだもんなぁ。
この事実だけ羅列したら、嘘松だと絶対言われる。俺だってそう思うしな。
それでも、神域化した後は特筆するべき事はなかったはずだ。夕飯を食べ風呂に入って、準備して就寝って流れ。
うん。日常生活だ、多分……
夕飯作ってから、神さまって人間世界のご飯食べられるの? って思ったりもしたけど、結果から言えば普通に食べてた。
なんだったら、めーちゃんおかわりまでしてた。
まあ、お供え物とか普通の食べ物な事が多いし、問題ないんだろうなぁ。
トラブルといえば、めーちゃんの寝間着がなかったのが、トラブルと言えばそうかなってくらい。
けど、まだ着てない俺のTシャツとハーフパンツを、とりあえずの寝間着代わりにしてもらう事で急場はしのいだので許して頂けたらと思う。
でも『俺の服使って』って言ったら、なぜかめーちゃんのテンション爆上がりしてたけど、袋に入ったままのTシャツとハーフパンツ渡したら、何かしょっぱい顔になってたっけ。
ゴメンよ、めーちゃん。
俺センスないから、そんなにオシャレなのは持ってないんだよ。
そんな事をつらつら思っている間に、俺は夢の世界へ旅立った。
そして翌朝、朝食後。
「じゃあ、早速俺はリサイクルショップ巡って、ゲームソフト買ってくるよ」
俺はリビングのローテーブルで食後のお茶をズズッとすすりながら、今日の予定をめーちゃんに話し始める。
ネットで購入も考えたんだけど、どうしても注文から現物が届くまでにタイムラグがあるからなぁ。
ある程度は実店舗で集めて、めーちゃんにデータ取り込んでもらいつつ、並行してネットでソフト購入ってのが、時間が無駄にならないと思うんだよね。
「めーちゃんは留守番お願いね」
「なんで留守番なの? アタシも一緒いくー!」
「ゴメンね、その洋服だと人間世界だとちょっと浮くというか、変わり者に見られるというか……」
めーちゃんって外出れるんだ……そんな事を思いつつ、留守番理由を、なるべく穏便に伝える。
めーちゃんの服装はなんと言うか、コミケやハロウィンの会場なら問題ないけど、日常生活ではいささか、いや、かなり問題があった。
似合う似合わないで言えば似合うんだよ。美少女は何着ても似合うからね。
ただ前衛的すぎるというか、現代日本のファッションではないというか……正直言うと、和風ファンタジーラノベの世界なら、何の違和感もなく馴染む感じの服装なんだよ。
服装で職質は多分されないと思う。でもご近所さんからは奇異の目で見られるのは確定事項ってくらいの服装だ。
それに48歳男性と外見14歳少女が昼間の日中腕組んで歩いてたら、めーちゃんの服装抜きで絶対職質される。
下手したら援◯交際を疑われて、交番へ連行なんて事に……
そりゃあ、めーちゃんの力で多分何とかはなるんだけど、日常生活では出来るだけめーちゃんの力に頼らないようにしたいしなぁ。
日本にダンジョン作ったあとは、日常生活でもめーちゃんの力が必要な場面があるかもしれないけど、それでも頼りきりはよくないよ、うん。
「戻って来たら、ネットでめーちゃんの服買おう、そうしたら一緒に出掛けてもいいから!」
服さえ現代風になって、土日祝日の外出なら、ギリギリ怪しまれないで済むだろうし。
「ヤダヤダヤダヤダー、服なんて昨日渡してくれたのでいいじゃん」
めーちゃんが俺の横で超絶駄々をこねている。
神さまが床に転げ回って駄々をこねるさまは見たくなかったかも……
「あれは寝る用の服なんだよ、あんなので外出れないって」
うーん、どうしたものかなぁ?
子育てとかした事ないから、こう言う場合の対処方法が全く分からない。
こうなったら、御大の力を借りるしかない!
俺はテレビを付け、サブスクのホーム画面を出す。
そして操作すると、めーちゃんが大好きな、あの国民的漫画家の代表作にして、日本が誇るキャラクターの1つでもある青いロボットのアニメのページをめーちゃんに見せた。
「ほ、ほら、見てよ、めーちゃん! 今でもこのアニメ続いてて、最新話まで見れるんだよ!」
俺の言葉にめーちゃんが駄々をこねるのを止め、視線をテレビの方に向ける。
イケる! 思った通り、めーちゃんはテレビ画面に釘付けだ。俺はとどめにページからアニメを再生した。
「リュっちゃん、これニセモノでしょ!!」
アニメが始まって数十秒めーちゃんが俺に向かって、少し口調を荒げてそう言った。
「えっ!? ホンモノだって!」
「声が全く違う!」
そう言えば、そうだった……声優陣全交代したんだっけか。
そう、長寿アニメの悲しい性、オリジナルの声優陣の高齢化が進んでしまったのだ。
良いアニメは長く世に残り世代を超え、神にすら愛される。
しかし、中の人は人間なのだ、いつかは老い演じる事が出来なくなってしまう。
交代当初は俺も違和感あったけど、交代したのが結構前だったから、もうある程度は馴染んでしまったんだよな。
今の子どもたちは、もう今の声優陣での作品しか見てないみたいだし。時の流れって早いよなぁ……
でも、めーちゃんはいきなり交代後の声優陣見たんだもんな、そりゃそんな反応するか。
「結構前に声優陣みんな交代したんだよ、だからそれもホンモノなんだよ」
「……アタシがいない間に、そんな風になってたなんて……」
めーちゃんは寂しそうに呟く。いつもは何とも思ってない、時の流れを実感してるのかな。
「で、でもさ、こっちの国民的アニメも新シリーズが定期的に出たりしてるし、主人公やメインキャラも昔とそんなに変わってないよ!」
俺は元は7つ集まると願いが叶う球を探す冒険譚なアニメのページも見せる。
「リュっちゃん、こっちは逆に声は同じなのに、姿が違うよ!」
そうだった、こっちは途中から主人公大きくなるんだった。
めーちゃんが見てた頃は主人公まだ小さかったんだっけ。
「こっちもそんなに話進んでたんだ……」
ヤバい、元気づけたかったのに、逆に余計に落ち込ませちゃったよ。
このままじゃ、あまりにもめーちゃんが可哀想だ。
俺は近くに置いてあったスマホで調べ、旧声優陣のアニメが見られるサブスクを何とか見つけると、めーちゃんに見せる。
「ほら、前の声優陣のアニメは今でも見れるから、こっちから見ればいいよ! 見飽きてきたら、7つの球を集める話を追って行ってもいいわけだし、ね」
俺が見つけた旧声優陣版が見れるサブスクに、めーちゃんは今度こそ食いつき、食い入るように画面を見始める。
「これこれ、これだよー」
なんとか気持ちが浮上したみたいで良かったよ。
やっぱりめーちゃんには笑ってて欲しいもんな。
操作法を一通り教えると、めーちゃんはテレビに夢中になってくれた。
そんなめーちゃんを尻目に俺は出掛ける準備を始めるのだった。




